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思うところがあって1500円以下のランチは食べないようにしている。1000円前後のランチなら自分で作った方が余程美味しいし、中食した方が余程コスパも良い。つまりはケチなのだ。無駄なお金は使いたくないので惰性で外食しない。

本を買うときも高ければ高いほど失敗率は少ない。本を買うときはアマゾンが多いが、目安としては中古で2000円か、もしそれ以下なら中古が新刊より高ければまずハズレはない。安物買いの銭失いというヒューリスティックは実に正しい。

先日お世話になった職場を離れ晴れて独立となった。本当ならピレネー山脈を越えて北部スペインを横断する巡礼路へ向かうはずだったが、コロナウイルスの関係で出国できなくなり焼けバチ的に熊野古道へ向かう。富山から名古屋を抜けて伊勢神宮から熊野大社を攻めるルートだ。伊勢路というらしい。

8時に富山駅を出た特急ひだは12時近くに名古屋へ到着。昼飯を求めて駅周辺を徘徊する。基本的にお金を出すのは枯れたものがコスパが良い。駅ナカのような立地はテナント料が高い分、原価が抑えられるのでコスパが悪く、広告が派手なお店も同様の理由でコスパが悪い。新しいお店も時間の淘汰を受けていないという点でハズレに当たる可能性が高い。

つまり大通りから少し外れた所にあって、店舗の外装は控えめで、昔からやっていて、客単価が周囲の平均価格より一標準偏差ほど高ければ、理論上ハズレはない。なおかつ調理スペースが店舗面積の半分近くだとなお良い。

そんなことを考えながら孤高のグルメを地で行く形で名古屋駅周辺を徘徊する。全ての条件を満たす店というのはほとんどない。歩き始めて小一時間、名古屋のローカルフード、あんかけパスタのお店を見つけた。

20年以上やってそうなそのお店には地元の人で賑わっていた。一番高いメニューで1300円、ドリンクと大盛りをつけてムリムリ1500円以上にする。待つこと15分、名古屋の方には申し訳ないが鉄板の上に乗ったそれは、びっくりするほど美味しくなかった。

なぜほぼ全ての条件を満たしたのにお店の選択を失敗したのだろうか?1500円使って失敗するのは手痛いので考えてみた。

立地、歴史、価格の因子以外に重要な要因があり、それはいわゆる名物にうまいものなしというヒューリスティックではないだろうか。普遍的にうまい食べ物は名物であることをやめて国民食になる。とんこつラーメン、明太子、讃岐うどん、江戸前握り寿司、たこ焼きなどである。ローカルフードがナショナルフードになるためにはある種の閾値を超える必要がある。残念ながら私が愛するきりたんぽ鍋もナショナルフードではない。

裏返して言えばローカルフードは、ローカル以外の人に拒否られることが多いのでローカルフードに留まるのだ。その意味で名物にうまいものなしというヒューリスティックは妥当だ。

では1500円以上のランチを食べると得るものがあるというヒューリスティックは正しいのだろうか。これもおそらく正しい。今回の失敗でローカルフードに高い金を出すのはやめておけという教訓が得られた。旅先でお金を出して勝率が高いのはローカルフードではなく本場の料理だろう(福岡でとんこつラーメンを食べ大阪でたこ焼きを食べ、日本橋で寿司をつまむ)。

とかなんとか書いていて少しさもしい気分になった。単に私は小銭で博打を打ちたいだけなのかもしれない。電車ももう直ぐ伊勢市駅だ。電車の中、中身の薄い雑誌を買わず一つの考察を組み上げられた分だけあんかけパスタ1500円の元は取れただろう。

さて伊勢市だ。真っ黒極太とかいう伊勢うどんでも物色してこよう(1500円以下で)
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