フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

運動と脳の関係とは?

運動バカというひどい言葉がありますが、運動というのは決して単純なものではありません。

ボール1つを投げるにしても、フィールドの上を駆け回るにしても、その行為は単純ではありません。

見る、聞く、触ると行った五感の情報を取りまとめ、それを最も適切な形でアクションとしてアウトプットしなければいけません。

そういったこともあり、運動経験が脳に与える影響について調べた研究は数多くあります。

では実際、運動によって脳はどの程度変わるのでしょうか?

今回取り上げる論文は、運動が脳構造に与える影響についてなされた研究のデータを取りまとめ、再解析をおこなったものになります。

At least eighty percent of brain grey matter is modifiable by physical activity: A review study

脳の8割は運動で変わる?

この研究で取り上げられた論文は、

①運動がヒトの脳形態に与える影響について調べたもの

②MRIを用いて脳容積の比較を行ったもの

③健常者を対象としたもの

で絞り込まれており、最終的にその本数は53件、対象被験者数は合計4684名(2562名の女性)、年齢は9~89歳となっています。

また研究対象となった運動としては

有酸素運動、持久力、筋力、バランストレーニング、ウェイトプレス、ストレッチ、自転車、ランニング、水泳、格闘技、ボールスポーツ、テニス、ゴルフ、ダイビング、ダンス、ガーデニング、歩行、草刈り、ジャグリング、階段歩行、レジャー活動などが含まれています。

これらの運動が脳の構造変化に与える影響を取りまとめた図が以下のものなのですが、

およそ脳の82%に及ぶ領域が運動によって変化することが示されています。

また運動特性による傾向としては、

・有酸素運動は海馬を増大させる

・有酸素トレーニングは感覚運動ネットワークの活性化を促進する

・協調トレーニングは視空間ネットワークの活性化を引き起こす

・筋力トレーニングは反応抑制に関連する脳領域の活動を変化させる

といったことが述べられています。

加えて運動によって変化しない脳領域としては

右上側頭回

紡錘状回

側頭極

の3領域があることが示されています。

これらの領域は抽象的な意味処理に関わる領域であることを考えると、「意味」の獲得には動くだけではなく、立ち止まって考えることが大事なのかなと妄想したりしました。

難しいです。

【要旨】

人間の脳は可塑性的です。つまり、変化した環境に応じて構造変化を示すことができます。身体活動(PA)は、人間の脳の構造的および機能的側面、ならびに心と体の健康と重要な関連があるライフスタイル要因です。多くの研究で、運動による局所的/全体的な脳容積の増加が報告されています。ただし、脳構造に対するPAの影響の全体的な範囲を示すマップは利用できません。この研究では、健康な人間のPAに関連する脳の構造変化に関するすべてのレポートを収集し、次に、これらの影響の程度の脳マップを提供します。この研究の結果は、総灰白質量の82%に等しい脳領域の大きなネットワークがPAに関連していることを示しました。

【参考文献】

Batouli SAH, Saba V. At least eighty percent of brain grey matter is modifiable by physical activity: A review study. Behav Brain Res. 2017;332:204-217. doi:10.1016/j.bbr.2017.06.002

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします