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脳の中の視覚的注意制御システムとは?

今日取り上げる論文は、空間的注意能力を基礎づけているのは、脳のどこの領域かを検証したものです。

2008年の論文で、ヒトの視覚的注意制御システムをモデルにまとめた有名な研究があるそうなのですが

このモデルはいろいろな制約があって実証はされて来られなかったようです。これを実証したのが今日取り上げる論文です。

結果だけを述べると

①注意には何らかの刺激が目に飛び込んでくるボトムアップ型の注意と自分から何かを探しに行くようなトップダウン型の注意の2つがあって、この2つのシステムは相互に影響しあっている。

②右の頭頂間溝は、このトップダウン型の注意とボトムアップ型の注意の両方に関わる。

③右の側頭頭頂接合部はボトムアップ型の注意に関わるが、トップダウン型の注意には関わらない。

というものです。

今回の研究で実証されたのが下記のネットワークなのですが

とてもとてもよくできていて、半側空間無視のことを考える上で、すごい役に立ちそうだなあと思いました。

興味のある方はご参照ください。

簡単に説明すると網膜と頭頂間溝(IPS)、前頭眼野(FEF)のループがぐるぐるまわって能動的に何かを探しに行くようなトップダウン的な注意システムを作っていて、これが図の青色の部分なのですが、

このトップダウン的な注意システムの右半球側にかぶさるようにして、右半球の頭頂間溝(TPJ)、腹側運動前野(VFC)、前部島皮質(AI)、中前頭回(MFG)のあたりがループを作って、受動的に、なにか目に飛び込んでくるような刺激を拾うようなボトムアップ型の注意に関わっていて、これがオレンジ色の部分になります。

ぱっとみややこしいのですが、じっとにらめっこしていると、半側空間無視とからめて、ふむふむというような気分になれると思います。
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【要旨】

「機能的MRIの研究に基づいたある仮説的モデルによれば、背側の前頭-頭頂ネットワークが外発的注意と内発的注意の両方に関わり、腹側ネットワークは課題に応じて再度注意の方向づけを切り替える役割があるということが提唱されている。しかしながら機能的MRIの機能的な制約もあり、モデルが実証されるには至っていない。本研究では時間的分解能の高い機能的MRIと事象関連経頭蓋磁気刺激を用いて、この注意の方向付けに関わる頭頂葉の背側と腹側の重要な領域を同定した。この研究から右の頭頂間溝が外発的注意と内発的注意の両方に関わり、側頭頭頂接合部は外発的な空間的注意の切り替えには関わるが内発的な空間的注意の切り替えには関わらないことが考えられた。」

参考URL:Dorsal and ventral parietal contributions to spatial orienting in the human brain.

コメント

半側空間無視の患者さんの治療をしている時に、座位や立位で体幹や頸部の回旋を促すと、少しの間、半側空間無視が良くなったりすることもあるのですが、

これは上記のネットワークの図でいけば、頸部や体幹の回旋というのは、何かを能動的に探すという文脈で眼球運動を司る前頭眼野と結びついて、そこを賦活する結果、ボトムアップ型のループにも何らかの影響がかかってくるみたいな感じなんだろうか。

ネットワークのハブになっているのが、頭頂側頭接合部だったり、頭頂間溝だったりすることを考えると
いろんな感覚を絡ませて介入するのがよいのだろうか、などと単純に考えたりもします。視覚→運動とか聴覚→運動とか、触覚→運動とか、あるいはその逆とか。
単純すぎるでしょうか(´・ω・`)
こういうのは赤ん坊におもちゃを与える乳児・幼児教育の方法がそのまんま横流しできるのかなと考えたりしました。
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