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「わたしの島皮質のおいて私達がともにムカついている:ムカツキを見ることと感じることに共通する神経基盤」

スピーチの肝は感情を共振させることにあるとも言います。

生後まもなく授乳室に入れられた赤ちゃんは時に一斉に泣き出すという行動が見られますが、これは何も赤ちゃんに限った話ではありません。

私達も状況が揃えば風邪でも引くように簡単に他人の感情に染められてしまいます。

身近な例では結婚式やお葬式、お祭り、政治集会、組合集会、いろいろありますが、私達は自分の感情をしっかり持っているようで案外他人の感情に染められやすい。

他人の感情に染められている時というのは私達の脳はどのように活動しているのでしょうか。

今日取り上げる論文は感情の共振について調べたものです。

実験では他人が強い匂いを嗅いでオエッとなっている写真を見ている時と、実際に自分が強い匂いを嗅いでオエッとなっている時の脳活動を調べたのですが、どっちとも同じように不快感に関わる脳活動が見られたそうです。

つまり自分が実際に臭い目にあっても、他人が臭い目にあっていても同じような脳活動、同じような感覚が引き起こされるということで、こういった脳の仕組みが簡単に感情が伝播する原因なのではないかということが述べられています。

【要旨】
他者の感情を理解するにはどいういった神経機構が働いているのだろうか。他者の感情を理解している時には脳は自らその感情を経験しているような働き方をするのだろうか。今回機能的MRIを使用して被験者に強いむかつき感を引き起こす匂いを嗅がせた時の脳活動を測定した。また同じ被験者に他人がむかつきを覚えている時の顔写真を見せその時の右脳活動を測定した。結果自分がむかついている時と他者がむかついているのを見るときでは右前頭皮質に同様の活動が見られ、程度は下がるが全帯状皮質にも同様の活動パターンが認められた。これらの結果から、脳は他者の動きを見ている時に自分の運動システムが働くように、他者の感情的な表情を見ている時にも自分の感情に係る領域の活動が引き起こされることが示された。この結果は他者の行動理解に関わる統一的な神経基盤がどのようなものであるかについて説明しうるものであると考える。

参考URL: Both of us disgusted in My insula: the common neural basis of seeing and feeling disgust. 

コメント

なぜこんなことが起こるかというと、これは例えばサルが腐った食べ物を食べてオエッとなったのを見て、その感情を感じることができることで危ない食べ物を食べるリスクが減るから、進化の歴史の中で人間に引き継がれたのでは・・ということが書いてありますがどうなんでしょう。

ちなみにもう少し詳しい話をすると

具体的には他人のムカつきも自分のムカつきもともに右の前島皮質に同じような活動が見られたそうです。

この前島皮質は情動処理との関わりが強い領域で、こういったことからも他人のムカつき表情を見るだけで同じような感情が引き起こされるのではないかとのことです。

イスラム教やキリスト教が世界に伝播していった様子を見ていると、その広がる速さも強さもあたかも感染症が世界に広がっていくパターンと似ているという話を聞いたことがありますが

こういうのもひとえに感情というのが感染的な要素があるからかなと思ったりします。

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