
イルカの自己認識能力と収斂進化
生物学では収斂進化というものがあるそうです。
これは全然別の種類の生き物なのに個別に進化していくとなんだか似たような生き物になってしまう現象のことをいうようです。
たとえばサーベルタイガーという牙がドカンと出たトラ(哺乳類)が大昔にいたそうですが、これと対をなすようにコアラ(有袋類)と同じ系統でティラコスミルスというサーベルタイガー瓜二つの生き物が出てきたり、
あるいは哺乳類から出てきたイルカと魚類から出てきたサメが姿形がそっくりだったり、
あるいはモモンガ(哺乳類)とフクロモモンガ(有袋類:コアラ・カンガルー系統)は姿形がそっくりだけど、全然別の生き物だったり
全然別の生き物が別々に進化して行ったら、気がついたら同じような姿格好になっていた、こういう現象を収斂進化というそうです。
生態系の中で似たようなポジションにいると、全然系統が違っていたとしても、何かしらの必要性に迫られてか、どうも似た格好になる、そんんが現象のようです。
今日取り上げる論文はイルカの自己認識能力について調べたものです。
実験では例によって鏡を使って、これにイルカがどう反応するかを調べているのですが、やはりイルカも鏡を見て自己認識を示すよう反応があったそうです。
ヒトやチンパンジーが鏡を見て自己認識できるのは、これは進化の道筋でサルがヒトになるにつれて自己認識能力が進化したというふうに捉えることもできると思います。
なのでヒトが自己認識能力がある、その少し手前のチンパンジーも自己認識能力がある、そんな流れで理解することができる。
でもイルカは進化の系統樹から行くとチンパンジーやヒトとはまるで別のところにいます。
全然別の進化の系統樹にいるんだけど、生態系のポジション故か、結果的にヒト科に見られるような自己認識能力を獲得している。
こういったことから自己認識というのは収斂進化の一つとして捉えられるのではないかということが述べられています。
「動物界において鏡に写った自己像を認識できるものはごく僅かである。現在、ヒトと大型類人猿だけがこの鏡による自己認識が可能なことが証明されている。今回二頭のイルカを対象に実験を行った結果、鏡の前で自分の身体についた印を確認している様子が見られた。この鏡を使って確認する能力は霊長類やヒトに見られる収斂進化を示す一例となるものである。」
参考URL:Mirror self-recognition in the bottlenose dolphin: a case of cognitive convergence.
コメント
歴史を振り返ればヨーロッパと日本はほとんど交流がなかったのに
似たような道筋を通って封建制が出来たり、中央集権制に移行したり、似たような政治システムの進化をしていて、
ひょっとしたらこれも収斂進化みたいなものなんだろうか。
あるいはオルタナティブロックがアメリカで芽を出し始めた頃、ヨーロッパや日本でも同じような動きが出始めたとか言う話も聞いたことがあるけど、そういうのも収斂進化なんだろうか。
経済で行けば手形の発生なんかも東西で独自に出てきたような気がするけど、これもそうなんだろうか。
進化というものは数学的に説明がつくなんかなんだろうか。
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