
イボの治療に対する遠隔治療の効果とは?
私達は困ったことがあると祈らずにはいられない生き物ですが、祈りには本当に効果があるのでしょうか?
今日取り上げる論文は祈りに効果がないことを示した研究になります。
方法
・対象:イボで困っている成人男女84名
・介入:被検者は無作為に、6週間の祈りを受ける群と受けない群に割り振られた。
祈りは民間のヒーリング団体に所属する祈祷者によって行われた。
祈祷者には対象者の詳細情報(名前、居住地、イボの状態)が送られた。
祈りは遠隔にて送られた。
・評価:イボの数、イボの平均サイズ、抑うつ感、不安感、主観的な改善感
結果
・祈りの介入が行われた群と行われなかった群で、いずれの評価項目に置いても有意差は認められなかった。
考察
・ヒーリングは、祈祷者からのエネルギーが患者の体内に流入し、患者の自己治癒力を高めると主張されているが、本研究では祈祷者による遠隔ヒーリングの効果は見られなかった。
・祈りによる介入は、二重盲検法で行われており、何らかのバイアスが影響する可能性は少ない。
・イボの治療については、祈祷の効果に関するエビデンスは得られなかった。
私的考察
祈りに効果がある論文と効果がないという論文を秤にかけると、どちらかとうと、ある論文のほうが多くなります。
というのも、研究というのは思ったような結果が出ないものは発表されないので当然といえば当然のような気もしますが、今回は祈りが効かないというものを読んでみました。
ちなみに祈りを行ったのは、イギリスを拠点とする民間のヒーリング団体、Confederation of Healing Organizationsになります。
祈りの効果については、解釈が難しくなんともいえないのですが、
おそらく効果があれば、公費負担になるのでしょうし、もし本当に効果がないのであれば、長い歴史の中で、祈るという行為自体が途絶えたはずですが、
祈りは今現在も存続していて、途絶える気配はありません。
その昔、ある宗教者は「人はパンのみに生きるものにあらず」といったそうですが、私達もエビデンスだけで生きていられるわけではありません。
私達がこうやって世界を去ることなく、明日に向かって生きられるのは、物語があるからではないかと思うことがあります。
世界の因果関係、私達はどこから来て、どこへ行くのか、世界はどのようなものなのかという一つの大きな物語があり、
大なり小なり、私達はそれを糧として生きています。
祈りというのは、私達が糧とする物語に栄養を与えてくれるものなのかな、それゆえ、今の今まで途絶えることなく存続してきたのかな、と思いました。
【参考文献】
Harkness, E F et al. “A randomized trial of distant healing for skin warts.” The American journal of medicine vol. 108,6 (2000): 448-52. doi:10.1016/s0002-9343(00)00342-9