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集中力とデフォルトモードネットワークの関係とは?

「集中力が足りない」だとか「もっと集中して」とかいいますが、果たしてこの「集中力」というのはいったい何ものなのでしょうか。

普段、私達がご飯を食べたり、文献を読んだり、包丁をとんとんしていたとしても、必ずしも全力で集中してそれをやっているわけではありません。

ご飯を食べながらぼんやり他のことを考えたり、包丁をとんとんしながら気持ちは明日の予定のことに旅立っていたりします。

つまり必ずしも全力で何かに取り組むというよりは、課題がそんなに難しくなければ頭のなかはグルグルと他のことを考えていたりします。

ところがこれがはじめての課題、これは教習所ではじめて車のハンドルを持つ時だとか、学生の時の実技試験の時なんかは余計なことなんか考えていられない、つまり集中力が高まるということがあるのではないかと思います。

つまり

課題難易度 (低)<<<(高)
集中力   (低)<<<(高)
余計な考え (高)<<<(高)

というふうに課題が簡単だと余計な考えがふわふわ浮かんで集中力が低下して、課題が難しいと余計なことを考える余裕などなく、集中力が高まっているということがあるのではないかと思います。

つまり「集中力」とは「余計な思考」を抑えつける力なのではないかと思います。

今日取り上げる論文はこの「集中力」と脳活動の関わりについて調べたものです。

脳にはデフォルトネットワークと呼ばれる領域があり、これは何もしていない時に活発に活動し、何かをしている時には活動が低下する独特の働きがある領域になります。

今回の実験では課題が難しくなればなるほど、この領域の活動の低下幅が大きく、また余計な思考がせり上がってくる頻度も低下することが示されています。

今回の実験で有意差が示された領域は左半球の後部頭頂後頭皮質、前帯状皮質、紡錘状回、中前頭回の4領域なのですが、これらの領域は意味処理や自己参照的な思考に関わる領域であり、この領域が「余計な思考」と結びついて集中力を阻害するのではないかということが述べられています。機能的画像所見から課題遂行時には血流量が低下して安静時に増加する領域が認められているが、この課題遂行時の血流量の低下は課題惹起性活動低下(TID)と呼ばれている。私達は以前、課題の難易度が上昇すると課題惹起性活動低下の値も高くなることを示した。今回の実験では課題惹起性活動低下と課題と関連しない思考が起こった頻度の関係について調査を行った。実験では聴覚認知課題の難易度を7段階に設定しそれに対応する課題惹起性活動低下と課題と関連しない思考の頻度について調査した。結果、難易度が高くなるにれ、課題と関連しない思考の頻度は低下する傾向が認められた。画像所見においては左半球の4領域(後部頭頂後頭皮質、前帯状皮質、紡錘状回、中前頭回)に課題と関連しない思考の頻度と課題惹起性活動低下の間の関係性との間に強い相関が見られた。これらの領域は意味処理や自己参照的な思考に関わる領域であり、内発的な認知過程の抑制が課題惹起性活動低下と関係していることが示された。

参考URL:Interrupting the "stream of consciousness": an fMRI investigation.

コメント

禅と茶道というのは結びつきが強いらしいけど

茶道というのはすごい集中力が必要で、なんだか終わった後すっきりしている。

これは稽古をつけてもらっている時は「今、ここ」に集中せざるをえず、これはなんだか瞑想や禅というものと似ているような気がして

禅僧はごはんを食べるときも雑巾をかけるときもそれだけに専心するように修行するらしいけど

「今ここ」だけに生きるのは、まあ大変なんだろうなと思います。

 

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