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「視覚的な自己認識の神経相関」

太宰治の小説に『人間失格』というものがありますが、その中で主人公が自画像を描いたらとんでもなくおどろおどろしいものが出来たというエピソードがあります。

私達は日々鏡を覗きこんでは自分の顔を認識しますが,このエピソードに限らず自分の顔を額面通りに受け取るというのは難しいようです。

極端な例では醜形恐怖といって自分の顔を非常に醜いものとして認識してしまうものから、ナルシズムという言葉にあるように自分の顔を美しいと思い込む症状まで様々ですが、なぜ私達はコンピュータのように、見たものを見たまんま感じることが出来ないのでしょうか。

今日取り上げる論文は自分の顔を見ている時の脳活動についての過去の研究を取りまとめたものです。

仮説的結論として、脳の中には額面通りに顔情報を受け取る部分とその情報にバイアスをかける部分があって、自分の顔を意識している時というのはこのバイアスがかかった情報を感じているのではないかということが述べられています。

【要旨】
本稿は視覚による自己認識、とりわけ自分の顔の認識に関わる神経活動を調べた研究のレビューを行う。自分の顔の認識には両半球が関わっており、とりわけ右阪急の関与が強いことが過去の研究から示されている。しかしながらこれらの研究は実験方法も様々であり、どの領域がどの認知機能に関わっているかについては明らかでない。本稿では自己認識と自己意識という観点から過去に行われた研究の統合を試みる。今後の研究では自分の顔の知覚によって引き起こされる認知活動について明らかにし、認知的要素と神経相関の相違について調べることが重要であると思われる。

参考URL:The neural correlates of visual self-recognition.

もう少し詳しい話をすると

①自分の顔の認識には脳のいろんな部分が働くけどやはり右半球の要素が強い

②第一段階として見た形そのままの空間情報的な処理を行う部分が活動し

③その後、その空間的な情報に記憶や情動、状況認知などに関わる情報が重なり

④その結果、主観的な自己像というものが立ち上がってくるのではないかということが述べられています。

絵画というのはものを描くのではなく、ものを見ている人の心を描くものなのかなと思いました。

 

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