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紡錘状回と顔認知の関係とは?

世の中には人の顔を覚えるのが得意な人、苦手な人がいると思うのですが、今日取り上げる論文は、顔認識の神経機構について調べたものです。

以前何度か取り上げたように、ヒトの顔の認識には紡錘状回というところが関係するようです。

紡錘状回というのは側頭葉の底面に位置するような脳回で

意味処理に関わる腹側視覚経路の下流に位置するような領域のようです。

 

従来の研究では顔写真を見せると紡錘状回が活動するという結果があったので、紡錘状回は顔の認知をする領域というような見解があったようなのですが、細かくみればこれは違うようです。

脳磁図というのは機能的MRIと違って、ミリ秒単位で活動の変化を捉えられるもののようですが、今回の研究では、この脳磁図を使って、表情認知に関わる神経活動を調べたそうです。

その結果、どうやら紡錘状回というのは、それそのものが顔認知に関わるのではなく、顔認知システムへつなぐ入り口的なものなのではないかということが述べられています。

つまり顔認知には

眼窩前頭皮質(情動と外部情報の統合)
         ↑
一次視覚野→腹側経路→紡錘状回→扁桃体(情動要素検出)
            ↓
          海馬領域(近時記憶)

のような流れで、紡錘状回からあとの過程で認知的な処理がなされるそうです。

つまり紡錘状回が顔認知をしているのではなく、紡錘状回というのは顔認知システムの入り口なのではないかということが述べられています。
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【要旨】

「紡錘状回やその周囲の活動というのは顔を含む様々な視覚刺激と関連して活動することが知られている。それが白黒であれ色付きであれ、人の顔が提示されてから等しく165ミリ秒で活動のピークを迎える成分があるが、これは顔の認識と色の認識が異なる処理のされ方をされていることを示している。顔の概念図は普通の顔写真と較べて30%の活動低下を示している。また顔の配置を崩した写真の提示から得られる結果からは、顔情報の全体的認識処理と部分解析的処理に左右差がないことが考えられた。また動物の写真の提示では50%、関係のない他の物品の提示では80%、人の顔の処理と較べて活動の低下が見られた。陰影のある物品の写真を提示した時にも紡錘状回は強い活動を示したが、これは紡錘状回が対象の顔的な要素を認識しようとするためと考えられた。また紡錘状回の活動は繰り返しの提示や、あるは性別、表情には影響を受けなかった。後頭正中部から得られる刺激提示後110ミリ秒のデータは表情の認知に関連していると考えられた。これらの実験の結果から紡錘状回は刺激提示から165ミリ秒後に顔情報の感覚入力を認知的な処理過程へつなぐ働きをしていることが考えられた。」

参考URL:Cognitive response profile of the human fusiform face area as determined by MEG.

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