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勝者総取りゲーム:バトルロワイヤルとしての頭頂葉

今日取り上げる論文は半側空間無視についてのものです。

この論文も長くて、何が言いたいのかいまいちつかめないところもあるのですが、自分が読み取った範囲では概略を述べると

①空間認知には頭頂葉が大きな関わりをしていると考えられる
②なぜなら頭頂葉は様々な感覚が統合され、それが運動に繋げられていく場だからである。
③この頭頂葉で意図的な動作に必要な情報が選択され、その選択されたものが意識に登ってくると考える。
④この選択される仕組は「勝者総取り(winner takes all)」であると考えられる。
⑤半側空間無視における空間認知の偏りもこの頭頂葉のおける「勝者総取り」の関係で捉えられると考える。

この勝者総取りというのは、選挙で言えば小選挙区制のようなものかと思います。

もし私の思い違いでなければ、中選挙区制では一位と二位が当選になりますし、比例代表制ではどの党がどれだけの割合の支持を受けたかで、当選者数が決まってくるような仕組みだったと思うのですが、小選挙区制はもっとシビアで一位以外の人はみんな落選になります。

リングの上でバトルロワイヤルをやって、たとえギリギリまで頑張って、全身創痍になったとしても、賞金を受け取れるのは生き残った最後のひとりだけ、そんなルールが勝者総取り(winner takes all)だと思うのですが、頭頂葉というリングの上で、この勝者総取りルールに則って、情報の選択なされているのではないかというような感じなのかなと思いました。

半側空間無視では、左側の認識が抜けてしまうのですが、これに右視野を見せて、そこで左右二つの物品を見せるとやはり、右視野であっても、左側の認識が落ちてしまうのはこの勝者総取りルールでの認識に関係しているのではないか、そんな話だと思います。

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【要旨】

「本稿では障害側の空間が意識されない病態である半側空間無視/消失についての総説を行う。この半側空間無視/消失という病態は、多くの場合右の下頭頂小葉の損傷に由来しており、視覚野そのものは損傷されておらず、その点において視覚野が損傷された病態とは根本的に異なるものである。半側空間無視/失認では視覚経路そのものは残存していることから、認識されない側の視覚情報も脳内で一定の処理がされていることが近年の研究から明らかになっている。半側空間無視/消失患者においても、健常者の前注意過程と同様に、意識に上る前の過程、脳内で一定の処理がなされた後の過程で意識に登ってくる情報が選択・調整されることになる。半側空間無視/消失患者の病態やサルの頭頂葉障害から得られた神経生理学的データを関連付けて考えると、頭頂葉というのは異なる感覚が統合されて運動への接続点となる領域であることから、この頭頂葉領域において意図的な行動に合致するような対象が選択されるのではないかと考えられる。この頭頂葉領域は主に空間処理に関わっているように思われるが、半側空間無視/消失患者では障害側の非空間的な情報も知覚されないことから、この頭頂葉領域が知覚が意識される上で大きな役割があるのではないかと考える。この知覚意識の形成における頭頂葉領域の作用は「勝者総取り」的なものと考えられ、この作用の結果が他の領域へ大きく影響していると考えられる。」

参考URL:Perceptual awareness and its loss in unilateral neglect and extinction.

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