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ヒトは扁桃体なしでもやっていけるか?

扁桃体は情動的な情報の処理に関わるとされています。

蜘蛛やヘビなどの個体の脅威になりうるようなもの、あるいはエロティックな画像のような性欲を喚起するようなもの、

こういった生存に関わるような情報は目にも入りやすいと思うのですが、こういった情報処理に扁桃体が関係しているのではないかと言われています。

でも詳しいことはまだよく分かっていないようです。

扁桃体の働き方もよく分かっていない。

スター選手のように単独で情動情報の検知に働いているのか、あるいは裏方のように通常の皮質経路のサポートに回っているのかもまだはっきりはしていないようです。

それだけでなく、実は情動情報の検出は、別に扁桃体がなくてもやっていけるのではないかという意見もあるようです。

今日取り上げる論文はこのことについて調べたものですが、扁桃体を損傷していてもいなくても情動的な情報の検出能力は大きく変わらなかったことが示されています。

このことから扁桃体というのは情動情報の検出に必須ではなく、扁桃体以外の別の神経機構が働いているのではないかということが述べられています。

【要旨】

「扁桃体は情動的な注意を調整する上で非常に重要な神経基盤であるということが報告されている。しかし近年、扁桃体は必ずしも情動的な注意を駆動する上で必要ではないという報告もなされている。今回視覚探索課題を、扁桃体損傷患者、健常者、投薬治療を受けているてんかん患者を対象に行い、扁桃体と情動的注意の関係について調査を行った。扁桃体損傷患者を含めたすべての被験者は情動的刺激を中立的な刺激より迅速に検出することができた。このことから扁桃体は情動的な視覚刺激に探索に必要ではなく、扁桃体によらない神経機構が脅威的な刺激の検出に関わっていることが考えられた。」

参考URL:Fear-enhanced visual search persists after amygdala lesions.



コメント

昔ある臨床研究で、ある内科疾患の予後を30人くらいを対象にカルテを遡っていろいろ調べたことがあります。

自分がよく知っている患者さんや亡くなった患者さん、いろんな人のカルテをめくっては、いろんなことを思い出して懐かしいなと思うのですが、

データを取るということで、患者さんのあらゆることは数字に置き換えられます。1,2,87,52、113などなど

楽しいことも悲しいこともいろいろあった重層な、重奏な患者さんの人生を一行の数字表に落としこんでいく時、どうしようもない違和感に襲われて
研究ってなんなんだろうと思ったことがありました。

昨日紹介したウルバッハ・ビーテ病のケースですが、

S・Mと言われる女性がよく被験者として協力しているようです。

扁桃体が働かないからといって別に社会生活が送られないわけでなく

普通に恋愛をして、普通に家庭を持って、普通に愛情深く子育てをして、ただ恐怖心だけを感じることができない女性のようなのですが

人の本質的な存在というのは数字に還元できないんじゃないかななどと考えたりしました。

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