
「脳のデフォルトモードネットワークの機能解剖学的抽出」
コンピュータにはできないけど、ヒトの脳が得意なものの一つに「ボンヤリする」ということがあります。
何を考えるわけでもなくとりとめもなく記憶や思考が頭を駆け巡る、こういった状態がいわゆるボンヤリしているという状態だと思うのですが、こういったボンヤリ思考に関連するような脳活動というのはあるのでしょうか。
今日取り上げる論文はボンヤリ考えてる時の脳活動について詳しく調べたものです。
脳の中にはぼんやりシステムと仕事システムというようなものがあって、この二つはシーソーゲームのようにどちらかが上がればどちらかが下がるという仕組みになっているようです。
この論文ではこのぼんやりシステムを詳しく見た結果、大きくは二つのサブシステムに分けられることが示されていて、
一つは「今システム」というようなもので、これは今の今の状態、例えばお腹が空いたなだとか楽しいなといった今をボンヤリ感じるシステムと
もう一つは「過去/未来システム」というようなもので、これは過去や未来のことをボンヤリ夢想するときに働くようなものがあるようです。
これから先に何をやっていくかという未来の計画に関してはこの二つが協調して働いていることが示されています。
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【要旨】
デフォルトモードネットワークは受動的な状態で活発に活動していることが知られている。今回このデフォルトモードネットワークがぼんやりした思考と能動的な意思決定で異なる領域が働いているかについて調査を行った。結果、デフォルトモードネットワークはいくつかの異なるネットワークで構成されていることが示された。また後帯状皮質と前部内側前頭前野の二つが中心となるネットワークを構成し、自己に関連する情動的な決定に伴い活動を増加させることが示された。これと対照的に内側側頭葉を中心とするネットワークは過去の記憶に基づく意思決定に伴い活動を増加させていた。未来の行動に関する意思決定に関してはこれらのネットワークが協調して活動していることが示された。
参考URL:Functional-anatomic fractionation of the brain's default network.
ということは将来の計画をたてる時にはお腹が減っているとシリアスなシミュレーションになって、お腹が膨れていると楽観的なシミュレーションになるということもあるんだろうか。
もう少し詳しいことを書くと
仕事システムにあたるものはタスクポジティブネットワークという名前で呼ばれていて、これはタスク(仕事)を行っている時に活動が強くなるようなネットワークで
ぼんやりシステムというのはタスクネガティブネットワークと呼ばれていて、名前の通りタスク(仕事)にかかりきりになるほど活動を弱めボンヤリするほど活動が強くなるようなもので、なんにも仕事をしていない標準状態(デフォルトモード)の時に活動が強いことから別名デフォルトモードネットワークとも呼ばれています。
今日の論文はこのデフォルトモードネットワークについて詳しく調べたものですが、これは二つのサブネットワークから構成されていて
一つは記憶関連領域(側頭葉内側領域)を中心とするネットワークで、これは過去や未来の状況をつくり上げることへの関わりが強く
もう一つは身体内外状況のモニタリングに関わる領域(背内側前頭前野)を中心とするネットワークで、これは今の今をぼんやり感じるようなことへの関わりが強いそうです。
以前にも同じ論文を取り上げたことがありますので興味のある方はどうぞ