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「中央実行ネットワークとデフォルトモードネットワークの切り替えにおける右前島皮質の決定的な役割」

「目を引く」という言葉があります。

喫茶店に腰を掛けていてぼーっとしていても、目の前を素敵な異性が通れば、ついつい注意がそっちに切り替わって目で追ってしまう、こんなことは少なからずあると思うのですが、こんな時脳はどんなふうに働いているのでしょうか。

脳というのはいろんなシステムが組み合わさってできているのですが、ボーっとしている時に働く「ぼんやりシステム」のようなものがあります。

これとは別に宿題を一生懸命やるときや一生懸命ノールを追っかけているような時に働く「仕事システム」というようなものがあります。

この「ぼんやりシステム」と「仕事システム」はシーソーゲームのようになっていて、どっちかが上がればどっちかが下がるという関係になっているのですが、

今日取り上げる論文では第三のシステムとして「ハッとするシステム」というようなものがあって、このシステムがぼんやりシステムと仕事システムの切り替えに関わっていることが示されています。

簡単に図示すると

ぼんやりシステム
  ⇅
ハッとするシステム
  ⇅
仕事システム

のような形でこのハッとするシステムが内向き注意(ぼんやりシステム)と外向き注意(仕事システム)の切り替えに重要であることが示されています。

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【要旨】

認知的な負荷がかかる課題を行っている時は中央実行ネットワークの活動が高まりデフォルトモードネットワークの活動が低下することが知られているがその仕組については明らかになっていない。今回の実験では聴覚刺激課題を用いてこのネットワークの動的変化について機能的MRIを使用して調査を行った。結果デフォルトモードネットワークから中央実行ネットワークに切り替わる際に別のネットワークの構成要素である右前島皮質と前帯状皮質に活動の増加が見られた。これに関してネットワーク解析を行ったところとりわけ右前島皮質がネットワークの切り替えに関与していることが示された。続く実験で視覚刺激や安静時の脳活度の変化を測定したところ同様の結果が得られ、右前島皮質が視覚聴覚を問わずネットワークの切り替えに関与していることが示唆された。この結果は内的な認知と外的な認知のコントロールに関わる仕組みについて重要な示唆を与えるものであると考える。

参考URL :A critical role for the right fronto-insular cortex in switching between central-executive and default-mode networks.

コメント

剣の達人がボーっとしていても殺気を感じて剣を抜くという時もやはり

ボンヤリ
 ⇅
はっとして
 ⇅
仕事

のような流れだし

こういったボンヤリ⇆仕事の意識の流れは日常生活でいろいろありそうです。

以下に少し詳しい話を書きますが、ややこしいので興味のない方は読み流してくれてもよいのですが

ぼんやりシステムは正しくはデフォルトモードネットワークと呼ばれていて、仕事システムは中央実行ネットワーク、はっとするシステムはセイリエンスネットワークと呼ばれています。

つまり

デフォルトモードネットワーク
  ⇅
セイリエンスネットワーク
  ⇅
中央実行ネットワーク

の形でネットワークが接続されており

その切替に大事なセイリエンスネットワークの中でも右前島皮質がとりわけ大事であることがこの論文で示されています。

座禅を組んだ昔の武士でもないのですが、長期間の瞑想トレーニングでセイリエンスネットワークを構成する右前島皮質の体積が増え、注意の切り替え能力が向上したという論文も多数あり、この右前島皮質というのはなんだか大事そうな場所のようです。

瞑想については実証研究も相当数出ており、うまいことやればリハビリテーション分野によくはまりそうな気もするのですが、どなたか実践している人がいたらコメントいただけたらありがたいです(´・ω・`)

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