「自己参照的内省活動と安静時との関係:PETによる研究」
認知症になるといろんなことを忘れていきますが、自分がいったいどんなキャラかという記憶は割合最後まで残っているような気がします。
自分の生まれたところや住んでいたところ、共に過ごした家族や仕事、そういったものすべてを忘れても自分がどんなキャラなのかという認識は割合最後まで保たれている。
これは例えば「おれかい、ああ俺は気のいいやつだよ」だとか「わたしかい?ちょっと小難しいところがあってね」だとか、自分の特性というのは人はなかなか忘れない。
しかしながらこういった自分のアイデンティティの根っこ、自分はどんなキャラかという情報は脳のどのへんで認識されているのでしょうか。
今日取り上げる論文はこの自分のキャラ認識に関わる脳活動について調べたものです。
脳の中には「わたしシステム」のようなわたし情報全般に関わるようなネットワークがあるのですが、その中でもある部分がとりわけ自分の性格を認識する際に強く働いていることが示されています。
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【要旨】
近年PETを使用した研究から自分のことを考えている時の脳活動と安静時の農家うつ道の関係性が指摘されている。本研究では13名の被験者を対象に3つの条件下(自分のことを考える、他人のことを考える、社会問題について考える)および安静時でPET測定を行い関連する脳活動について調査を行った。結果安静時に見られた脳活動は自分のことを考えるときにもっとも関係が強いものであった。安静時と比較し課題実施時全般に背内側前頭前野、左前中側頭回、右小脳および両側の側頭極に血流量の増加が認められ、右前頭前野、右内側及び外側頭頂葉に血流量の現象が認められた。さらに腹内側前頭前野が(1)自分のことを考える課題で最も強く活動し(2)安静時と自分のことを考える課題の両方で共通して活動し(3)自分のことを考える過程と脳血流量の間で相関性を持つことが示された。これらのことから腹内側前頭前野が自分のことを考えるときと安静時に重要な役割を果たしていることが考えられた。
参考URL :Self-referential reflective activity and its relationship with rest: a PET study.
コメント
このある部分というのは脳の中央部にある腹内側前頭前野と言われる部分です。認知症になってもこの部分は割合最後まで萎縮せず残っているようです。
脳の本をひらけばよく出てくる人物の一人にHM氏という人がいて
手術の後遺症で記憶能力がごっそりおちてしまい、それゆえ記憶に関わる様々な研究対象にされた人なのですが
若いころの記憶がなくても、いまさっきの記憶がなくても「自分かい?気のいいやつだよ」という自己認識は保たれていたようです。
本人の写真を見たのはある学会の「わたしとHM氏の思い出」というようなタイトルの講演だったのですが
やはり本人の自己評価通り多くの科学者から愛されたような人物だったようです。
しかしながら記憶をなくしたHM氏は常に楽しげだったような話を聞くと
”記憶”こそがヒトが持ちえる苦しみの元凶なのかなと思ったりします。