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「抽象的で非生物的な刺激の連なりは動作の観察や想像に関わる腹側運動前野を活動させる」

私達は生まれたその日からずーっと身体を動かしながら過ごします。

それはボールを投げたり、野菜を切ったりといろいろだと思うのですが、よくよく考えてみると同じ動作というのは一つとしてありません。

いくら熟練の凄腕ピッチャーと言っても一球一球がまったく同じ身体運動ということもないでしょうし、熟練でない私達がボールを投げたらなおのことでしょう。

あるいは幼稚園児が泥団子を投げるのと少年がソフトボールを投げるのと、おじいさんおばあさんがお手玉を投げるというのは身体運動的に考えたらまったく違うもののようなきがするのですが、私達の脳はいずれも「投げる」という一つのことばで捉えます。

こんな風に動くにしても見るにしても一見バラバラないろんな動作を一つの動きとして処理するというのは不思議なような気がしますが、こういったことが可能なのも脳の中に動きの「語彙」を処理する場所があるからだと言われています。

これはすなわち「投げる」「握る」「切る」「蹴飛ばす」などなど人の運動に関わるいろんなことばが処理されるなにかがあるということで、こういった仕組みがあるからスイングフォームをちょっと見ると「ああ、この人は投げるんだな」というふうに動作を理解できる、そういったことがあるそうです。

今日取り上げる論文はこの動きの「語彙」を処理する場所について詳しく調べたものです。

実験では他人の動作を見ている時と、自分が動作を行っているのを想像している時と、幾何学模様が一定の順序にそって変わっている様子を見ている時の脳活動をそれぞれ調べたそうです。

結果を述べると動きを観察したり想像している時には動きの「語彙」を処理する部分が活動したのですが、幾何学模様が一定の順序で変わる様子を見ている時も同じ部分が同じような活動を示し、この領域は運動情報の処理にとどまらず、一定の「順序」そのものをコードするのではないかということが述べられています。

ポイント

本研究ではこの腹側運動前野が非生物的で抽象的な一連の変化に対しても反応するかについて検証を行った。

実験では動作を観察する、自分が動作を行っているところを想像する、無機質な形態が変化する様子を観察するという3条件を被験者に行わせ、その時の脳活動を比較した。

結果、上記いづれの条件であっても腹側運動前野が活動することが示され、この領域は対象の経時的で連続的な構造変化の処理に関わることが考えられた。

参考URL :
Sequences of abstract nonbiological stimuli share ventral premotor cortex with action observation and imagery.

補足コメント

いろんな動作というのは考えてみれば一定の順序からなっている。

ピッチングフォームを考えてもみかんの皮をむくという動作にしても順序を入れ替えたらまったく違う動作になってしまう。

何かが一定の順序を持って変化するとき、その順序構造を処理する何かがあるみたいで

それが人の運動に働けばある一連の運動の認識や実行につながるのだろうし

マクロ的に世の中の移り変わりを見て「時代が動き出した」などと認識するときにもやはり同じようなところが働いているのかなと思いました。

なんだか話はややこしいのですが、脳の中には「順序」を把握する何かがある、それは認識全般の万能包丁みたいにいろいろ働く、そういった話なのかなと思います。

 

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