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ミラーシステムとEBA

今日取り上げる論文はヒトが他人の体を認識しているときにどのように脳が活動しているかについて調べたものです。

ヒトが人の姿を認識するときには、これが手、これが足というふうにバラバラに認識するのではなく、一つの全体的なまとまりとして認識しています。

このような認識システムがあるからスティックピクチャーみたいな棒人間も、人の形として認識できると思うのですが、これがどういう仕組でなされているかについて調べたのが今日の研究です。

結論から言うと、このように人の体をひとかたまりの集合として認識できるのに大事なのは、やはりミラーシステムで大事なブローカ野周囲なのではないかということが述べられています。

人の身体認識に関わる領域として、EBA(extrastriate body area)という、背側視覚経路にある領域も知られているのですが、

図中EBA

上記参考URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnhum.2011.00124/full

この部位は、手や足といった個々の身体パーツの認識に関わる領域なのではないかということが述べられています。

セラピストが歩行分析を使用とする時、全体像を見るときにはブローカ野のあたりが強く働いて、股関節や足関節の細かいところを見るときには、EBAのあたりが働いているのかなと思いました。

【要旨】
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ヒトが他者の身体を認識するときには、まっすぐ立っている像を見ている方が逆さまに立っている像を見るより、より容易に認識することが出来る。このようなことが起こるのは、ヒトが身体を資格認識するときには、個々の身体部位を認識するのではなく、全体の配置、構成といったものを通して認識しているためだと思われる。このような情報処理機構として、前頭葉と側頭葉、頭頂葉にまたがる大きなネットワークがあることが示唆されているが、その詳細については明らかにされていない。本研究では反復経頭蓋刺激法を用いて、この身体構成認識がどのようになされているかについて調査を行った。18名の健常成人を対象にまっすぐ立っている像と、頭を下にして逆さまに示した像の二つを提示して判断させる課題を行った。課題が提示された150㍉秒後に腹側運動前野、右有線外身体皮質(後頭側頭腹内側領域)、右上頭頂小葉および対照領域として一次視覚野に対してそれぞれ反復経頭蓋刺激を行い、それらの領域の活動を抑制した。結果、腹側運動前野への刺激でまっすぐに立っている像の認識機能の低下が見られた。また右有線外身体皮質(後頭側頭腹内側領域)への刺激で逆さまに立っている像の認識機能の低下が見られた。さらには一次視覚野と右有線外身体皮質(後頭側頭腹内側領域)への刺激で逆さまに立っている像の認識機能に著しい低下を示した。これらの結果から前頭-頭頂のミラーネットワークが身体構成の認識に伴い働いていることが考えられ、また視覚認識がこのネットワークで身体化されていることが考えられた。また一次視覚野や右有線外身体皮質(後頭側頭腹内側領域)は、全体的な身体構成ではなく、ここの身体部位の認識に関係していることが考えられた。このように視覚による身体認識には全体の構成を理解する経路と個々の身体部位を理解する経路の二つの経路があることが考えられた。」

参考URL:Transcranial magnetic stimulation reveals two cortical pathways for visual body processing.

コメント

ものごとを理解しようとしたり、込み入った問題を解決しようとするときには、一つ上の目線で見ればいいみたいなことをよく聞きますが

メタ認知とでもいうんでしょうか、少し距離をとって問題の全体像を捉えよう、認識しようとしているときには、ブローカ野のあたりが強く活動するのかななどと考えたりしました。

 というか、言葉を使うこと、それ自体がもうすでにメタ認知なんだろうか。

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