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「感覚を横断する自己:自分の顔と自分の声の認識に関する機能的MRIを使用した研究」

私達人間は自意識過剰な生き物です。

しかしながら私達が「自分」というものをイメージする時には何を考えるのでしょうか。

自分の顔、自分の肌の色、自分の声、自分の名前、自分の匂い、いったいどういったものをイメージするのでしょうか。

おそらくどれか一つということもなく、いろんな感覚情報の集積が「自分」というイメージなのではないかと思います。

つまり簡単に図示すれば

というふうにいろんな情報が重なったところに「自分」というイメージが立ち現れると思うのですが、こういったことは脳科学的にはどういったふうに示されているのでしょうか。

今日取り上げる論文は「自分」情報を認識している時の脳活動について調べたものです。

実験では自分の顔や親しい人の顔を見せたり、あるいは自分の声や親しい人の声を聞かせたりしてその時の脳活動を調べたのですが、自分の顔情報にも自分の声情報にも共通して反応する領域があり、この領域が統合的な「自分」感覚の成立に一役買っているのではないかということが述べられています。

【要旨】
様々な研究によって右半球の脳が自己に関係した刺激に反応することが示されている。先行研究からは脳のある領域は自分の顔を見た時にはよく活動するが、親しい他人の顔を見た時にはそれほど活動しないことが示されている。自己という概念は様々な感覚から構成される抽象的なものであるという考えのもと、この領域が自己の声にはよく反応するが他者の声にはよく反応しないのではないかという仮説のもと実験を行った。実験では被験者に被験者自身の顔写真と親しい友人の顔写真を見せ、また被験者自身の声と親しい友達の声を聞かせ、その時の脳活動を機能的MRIを使用して測定した。先行研究の結果と一致するように自分の顔写真を見た時には右半球の下前頭回、下頭頂葉、下後頭葉に活動の増加が認められた。さらに自分の声を聞いた時には右半球の下前頭回に活動の増加が認められた。これらの結果から右半球の下前頭回は自己に関係する様々な感覚刺激が終息する領域で抽象的な自己表象に関係している可能性が示された。

参考URL:The self across the senses: an fMRI study of self-face and self-voice recognition.

コメント

少し詳しい話を書くと

要約に描いてあるようにミラーニューロンシステムの一つである右下前頭回が自分の声にも自分の顔にもよく反応するということで、

自分に関係する感覚情報は最終的にここに集まってきて、自分感覚が成り立つんじゃないかというお話でした。

もう一つ穿った見方をすれば

ミラーニューロンシステムはモノマネシステムなのですが、自分と似た人ほどこのシステムが駆動しやすい、つまりものまねしやすいということで

自分というのはもっともモノマネしやすい他者なのかなとも思いました。

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