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「未来を心に描いている時の神経基盤」

よくスポーツではイメージトレーニングが大事と言われています。しかしこれが大事なのはスポーツだけとは限りません。

プレゼンの前にステージに立つところをイメージするのも大事ですし、女の子をデートに誘う時もある程度事前のイメージがものをいうこともあるかもしれません。

こんなふうに事前に未来を心に描くというのは日常的になされていると思うのですが、ヒトがこの未来を思い描いている時脳はどのように活動しているのでしょうか。

今日取り上げる論文は未来の出来事を考えている時の脳活動について調べたものですが、結果を述べると二通りの大きいパターンがあることが示されています。

一つは脳の中でも動きのイメージに関わる部分です。このタイミングで肘が曲がった、重心が右足の乗って行くといったようなボディイメージです。

さらにもう一つは視覚的イメージに関わる部分です。これはある動作をしている時の視界に入る景色がどのようなものかというイメージです。

未来の出来事をイメージしている時はこの身体と視界、両方が同時にシミュレーションされているということで、なにかイメージトレーニングをするときには身体のイメージだけでは片手落ちなんだろうなと思いました。

【要約】
未来を思い描く能力はヒトにとって普遍的なものであるが、この神経学的根拠について調査した研究は少ない。本研究では被験者にある単語を提示して、その単語から過去や未来の出来事を想像している時の脳活動について機能的MRIを使用して調査を行った。対照条件としてはクリントン大統領の写真を見ている時の脳活動を測定した。過去、未来、対照実験から二つの神経活動パターンが抽出された。一つは左外側運動前野、左楔前部、右小脳後部に見られる活動でこれは過去の出来事の想起よりも未来の出来事を想起している時に高い活動が見られた(いずれの場合もクリントン大統領の顔を思い出している時よりは高い活動を示した)。これらの領域は先行研究から動きをイメージしている時の脳活動と類似したものであった。さらにもう一つの神経活動パターンは両側後帯状皮質、両側海馬傍回、左後頭葉に見られるもので、これは過去と未来の両方の出来事の想像をしている時でほぼ同様の活動を示した(いずれもクリントン大統領の顔を思い出している時よりは高い活動を示した)。これらの領域は視覚的なイメージを想起しているものの類似したものであった。これらのことから過去と未来の出来事のイメージでは、未来のほうがより動きのイメージに関わる領域の活動が高く、視覚のイメージに関してはほぼ同様であることが示された。こういったことからも被験者は未来をイメージするにあたり、よく知った視空間文脈を利用していることが考えられた。

参考URL:Neural substrates of envisioning the future.

コメント

聞いた話ですが、タイガーウッズというのは自分がボールになって飛んで行くのをイメージして打つそうです。

そこまでいなくても運動をイメージする時というのは目に入る景色も思い出させたほうがいいんだろうなと思いました。

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