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前頭前野の中でも大事なのはどのへんなのか?

人を人たらしめる脳の領域としてよく前頭前野が挙げられます。

しかし前頭前野といっても広範です。ぱっと見た感じ、脳の半分近くの面積を占めているようにも見える。

この前頭前野の内、最も大事なのはどのへんになるのでしょうか。

結論から言うと前頭前野の底部にある領域、後部前頭眼窩野が最も大事なのではないかということが、今日取り上げる論文で述べられています。

なぜか?

人でも組織でも、必ずネットワークの要になる中心人物がいます。

いろんな情報はこの中心人物に集まってきて、またこの中心人物からいろんなところに情報が散布されます。

ネットワーク理論ではこのようなポジションをハブというのですが、脳で言えばこのハブはどのへんに当たるのでしょうか。

まずひとつ考えられるのは視床でしょう。

いろんな情報が視床めがけてやってきて、そこから皮質のあちこちに情報が受け渡される。

もうひとつ考えられるのは皮質下構造の肝ともいえる扁桃体でしょう。

視覚にしても聴覚にしても、いろんな情報が扁桃体を経由してこれまた皮質のあちこちに情報がばら撒かれる。

で、後部前頭眼窩野といわれる領域は、この視床と扁桃体の両方からの情報を取りまとめる領域に位置するそうです。

いわばボスのボス、大ボスにあたるようなポジションに存在しているそうです。

Thalamus:視床 Amygdala:扁桃体 Orbitofrontal Cortex:前頭眼窩野 Sensory Cortices:感覚皮質

上図参考URL:

こういった関係から何かに注意するにしろ、行動を起こすにしろ、その肝になるのは後部前頭眼窩野ではないかということが述べられています。



【要旨】

「霊長類の前頭前野は行動と関連した領域であると言われている。この前頭前野の中でも前頭前野外側部は視覚や聴覚、様々な体性感覚領域と相互連絡を持っており、目標志向的な行動の調整に関わっているとされている。また感覚連合野から前頭眼窩野への投射は前頭前野外側部に較べてより広範であり、特にその後部に顕著で、身体内外の情報が広範に集約される部位である。この後部前頭眼窩野は扁桃体に投射し自律神経系を通じて覚醒や恒常性の調整に関わる。さらにこの後部前頭眼窩野は視床背内側核の巨大細胞と相互連絡をもち情動処理に関わる。このように後部前頭眼窩野の連結構造は前頭眼窩野の中でも際立っており、この領域が情動処理に深く関わっていることを示唆している。前頭前野背外側部と後部前頭眼窩野は抑制性に働く視床網様体核に投射しており、情報の取捨選択機能に関わっていると考えられる。前頭前野内の各領域間の相互連絡によって感覚情報と情動が統合され、注意と行動が調整されると考えられる。ADHDのような精神障害ではこのシステムが機能していないことが考えられる。」

参考URL:Sensory pathways and emotional context for action in primate prefrontal cortex.

 

 

 

 

 

 

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コメント

今のネジが外れたような効率主義、結果主義的な風潮はなんだか前頭眼窩野の障害とも言われるADHD的な感じがして

これはADHD的な向こう見ずな人が多く渡ったアメリカが時代の主導権を握っているからかなとも思うのですが

あと何十世代かして、このADHD的な人たちが生存競争上優位にたって人口の大部分を占めるようになれば

非ADHDが異常とされる時代が来るのではないかなと思ったりします。

自然はそこにあるだけで、本来異常も正常もないんだろうなと思います。

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