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「人の社会的認知の特有性」

サルに出来なくて人ができる技能の一つに指さしというものがあります。

この指差し行為は赤ちゃんだと大体生後12ヶ月位でできるようになるといわれているのですが、なぜ赤ちゃんに出来る指差しがサルには出来ないのでしょうか。

今日取り上げる論文はヒトの社会的な認知に関わる脳機能について調べたものです。

この論文によるとヒトが指さし出来るようになるには三項関係的な理解が必要だそうです。

この三項関係の理解というのは「わたし」と「あなた」と「もう一つ」という3つの要素で構成される場を理解するということです。

上司から「この間のあれ、どうなった」といわれて理解できるとしたら、上司とあなたとプロジェクトという三項関係が理解できるからですし、

まだ言葉が話せない子供が親の袖を引っ張って絵本を指差すのであれば、子供が親と自分と絵本という三項関係を理解できているからでしょう。

こんなふうに三項関係の理解というのはコミュニケーションの基礎の基礎になる部分なのですが、脳の中にはこの三項関係に関わる部分があって、この部分がヒトではよく発達しているため指差しが可能なのではないかということが述べられています。

 

【要旨】
近年の研究により社会的認知は脳の5つの領域によってなされていることが示されている。後部側頭葉には線状体外身体領域があり、この領域は人の身体の認知に関わるとされている。この領域の近くには後部上側頭回があり、この領域は何を目標にその人が動いているかの理解に関わるとされている。さらに側頭頭頂接合部は他者の心を推測する上で重要な役割を果たしているといわれている。内側前頭前野は少なくとも二つの領域に分けることが出来、腹側部は情動的な共感に関わるとされており、背側部は三項関係の理解に関わるとされている。そしてこの三項関係の理解が共同注意や協力的なゴールの達成に関係すると考えれる。

参考URL:Uniquely human social cognition.

コメント

もう少し詳しい話をすると

心の理解には内側前頭前野が関わるとされているのですが、この内側前頭前野は二つに分けることが出来

腹側部は共感的な理解、これは苦しむ我が子を見て自分まで苦しくなるようなそんな心の理解に関わり

背側部は三項関係的理解、つまり自分を含めたその場の状況を俯瞰的に見てロジカルに理解するようなそんな働きがあるようです・

自閉症が必ずしも他人の心を理解できないわけではなく、腹側部の共感的理解は十分にあって、背側部のロジカル的な理解が出来ないだけという話があったり

あるいはサイコパスのように良心が欠如した人間というのは腹側部の活動がないけれど、背側部の活動はあるのでロジカルに心を理解できるという話が書いてあり、なるほどと思いました。

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