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民主主義を保てる国、崩れる国の違いはなにか?

政治システムというのは、いろいろあって、古代ギリシアに至る段階で独裁制から共和制、民主政まで一通り出揃っていたそうです。

ここ数百年は紆余曲折がありながらも民主主義が優勢な状況が続いています。

しかしながらこの民主主義というのは一体どういったものなのでしょうか?

民主主義の定義は色々ありそうですが、世界各国の民主主義を評価するある研究所の定義では

「選挙、自由、参加、熟議、平等」が5大要素として考えられているようです。

ではこの民主主義が保てる国と保てない国というのはどのような違いがあるのでしょうか?

今回取り上げる論文は、民主化に関係する要因と民主主義の保持に関係する要因についてのメタアナリシスになります。

The determinants of democracy: a sensitivity analysis

民主化要因と民主主義保持要因

この研究では過去になされた民主化や民主主義の頑強さに係る指標について整理し、まとめたものになります。

またこういった傾向は時代背景によっても異なるので、

対象とする期間を

(1) 1960–2015 (全期間)

(2) 1974–2015 (民主化の第三の波)

(3) 1960–1990 (冷戦期)

(4) 1991–2015(ポスト冷戦期)

の4つに分けて比べています。

民主主義の程度を図る指標にはいろいろとあり、この論文の中でも複数の指標が扱われているのですが、現状ではスウェーデンに本拠地を置くV-Dem研究所の指標が最も精度が高いそうです。

 

民主化要因については、様々であり大きなところとしては

・一人当たりのGDP

・一人当たりの情報機器(テレビ、ラジオ、電話)

・一人当たりのエネルギー消費量

・産業の多様性

など、いわゆる経済に関係したところが多く、

民主政体の頑強性に関わる要因としては、

・公平公正な行政システム

・政治汚職

の2つの程度によってどれほど民主政体の頑丈さに関わっていることが示されています。

海を挟んだある大国の創設者は、古代からその時代に至る政治システムを深く考察し、

熟慮の末に様々な安全装置をその政治システムの根幹に仕込んだとも聞きますが、

民主主義の運営がほころびるということは、その根幹となるシステムにどこか不備があったのかなと思ったり、

三権分立が曖昧な国というのは、遅かれ早かれ民主政体がほころびるのかなと思いました。

【要旨】

さまざまなモデル仕様、サンプル、経験的尺度を使用した多数の研究は、民主主義のさまざまな経済的、社会的、文化的、人口統計的、制度的および国際的決定要因を示唆しています。民主化と民主主義の存続を区別し、制御変数セット、民主主義の尺度、およびサンプル期間を変化させることによって、提案された 67 の決定要因の感度をテストします。さらに、既存の感度分析を超えて、理論的に動機付けられた制御変数が民主主義文献の 2 つの主要な決定要因である収入とイスラムの感度にどのように影響するかを分析することにより、集計結果を解き明かします。全体として、私たちの結果は、民主主義の存続よりも民主化の決定要因の方がはるかに多いことを明らかにしています。民主主義の存続のために、唯一の強力な要因は、収入と法を順守する官僚主義です。さらに、私たちの結果は、所得と民主化の関係を取り巻く不確実性を浮き彫りにしていますが、より広範な開発プロセスが民主化の可能性を高めることを示しています。さらに、イスラム教徒の人口が多い国では民主化の可能性は低くなりますが、その関係は、天然資源、教育、近隣地域の特性を制御することに敏感です。感度分析の他の結果は、政治的抗議、民主的な近隣、および民主主義の世界的な割合が民主化にプラスの影響を与えることを示していますが、天然資源、多数派システム、および長期にわたる指導者は、国の民主化の可能性を低くしています。

【参考文献】

Rød, E.G., Knutsen, C.H. & Hegre, H. The determinants of democracy: a sensitivity analysis. Public Choice 185, 87–111 (2020). https://doi.org/10.1007/s11127-019-00742-z

 

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