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「共感と心の読み取りの神経的基盤と個体発生:過去の研究の総括と未来への研究への示唆」

ヒトは心を理解する生き物です。

ただこの心の理解というのはいろんな方法があるようです。

一つは母親と子供の関係のように、相手の感情をダイレクトに感じるような理解の仕方です。こういった心の理解は共感という言葉で説明されるそうです。

それとは別に理詰めで相手の心を読み取る方法もあります。

なにも相手に共感しなくても、相手の仕草や相手の性格、最近何があったかという知識を元にしてロジカルに相手の心を推測する。

こういったロジカルな心の理解の仕方は心の理論、あるいはメンタライジングという言葉で説明されるそうです。

今日取り上げる論文はこの共感とメンタライジングの違いについて過去の研究を元にまとめたものです。

結論を述べるとこの二つは脳の中でも異なるシステムで処理されること、

また共感能力の方は発達が早く4歳位にはしっかりしてくるのに対し、理詰めで相手の心を考えるメンタライジング能力は思春期を過ぎた遅い頃になってしっかりしてくるということが述べられています。

【要約】
近年の社会神経科学の発展によって人の心を理解している時の脳活動が明らかになってきている。本稿では心の理論と共感をそれぞれ別のものとして取り上げ過去の研究の総括を行う。これら二つの能力はしばしば同じ意味として取り扱われるが、神経学的にはこれらは異なる神経回路に属するものである。心の理論とは他人の意図や目的、感情といった精神状態を読み取る機能であり、その神経的基盤は側頭葉と前頭前野である。それに対し共感は他人と感情を共有する能力であり、その神経的基盤は辺縁系と傍辺縁系である。これらの議論に加え、共感という言葉が情動の伝播という意味から他者の視点てものを見るという意味まで幅広い意味で使われていることを示す。最後に他者の心を理解することと他者の情動を分かち合うことは個体発生的にも異なる形で神経系の発達が進むことを説明する。とりわけ共感能力はメンタライジング能力と比べて発達が早く、それというのもこれに関わる神経基盤が系統発生的により古層のものであるためで、それに対しメンタライジング能力は発達が遅く、神経系の成熟のほぼ最後の段階でなされていることを説明する。

参考URL:The neuronal basis and ontogeny of empathy and mind reading: review of literature and implications for future research.

コメント

少し詳しい話をすると、

母親が子供の心を感じるような時は、脳の中でも感情に関わる辺縁系、傍辺縁系といわれている部分が活動し

営業先でお客さんの心をクールに読み取ろうとしている時には前頭前野や側頭葉といったところがよく働いているそうです。

脳というのは順々に発達してくるものなのですが

進化的に古い脳ほど早く発達する傾向があるそうで、それゆえ情動に関わるような古層の脳は発達が早く4歳位には共感能力が身についてくるのに対し

進化的に最近のものである前頭前野は発達が遅く、思春期を回るくらいでしっかりしてくるそうです。

その昔ペルーを旅した時にいろんな子供が仕事をしていて

路上でゲリラ的にオレンジを使った曲芸を見せられて、お金をおくれと言われたり、

あるいは何かしらの小物を路上で英語で買わないかと交渉されたり、

みんな小学生くらいだったけど、きっとメンタライジング能力の発達も早いんだろうなと思いました。

脳の発達には遺伝と環境、両方大事なんだろうなと思います。

 

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