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前頭前野とグローバルワークスペース

小学校の頃を思い出すと「手つなぎ鬼」という遊びがあったと思いますが、皆さんは御存知でしょうか。

鬼がいて、誰かにタッチすると、タッチされた相手と手を組んで、他の誰かにタッチそいて、さらに3人で手をつないで・・というものです。

広い体育館なんかで、10人なんかでワ~って手をつないでるのが追っかけてきて、どうにか逃げる、そんな遊びだったと思います。

今日取り上げる論文は、意識的な知覚がどのように成立するのかについて述べたものですが、この成立の仕方が手つなぎ鬼によく似ていると思いました。

ではどう似ているのか?

この図を見てください。

上図参考URL

この図のグローバルワークスペースと言われている部分が手つなぎ鬼の鬼の部分です。これは前頭前野を中心とする脳活動を表しています。

赤やオレンジは外部刺激に対する感覚領域の反応を示しています。

手つなぎ鬼では鬼に捕まると、鬼の中に取り込まれます。

これと同じように、ある情報が意識的に知覚されるためには一度鬼(前頭前野を中心としたグローバルワークスペース)に捕まえられなければならない。

小さくて地味で目立たない子供でも、鬼に目をつけられたら、タッチされて鬼に取り込まれるのも容易になるでしょう。

おんなじように小さな刺激であっても、そこにグローバルワークスペースからのトップダウン処理(注意)があれば容易に「意識的な知覚」として浮上する。

大柄でやんちゃな子供でも、鬼の注意が他の子に向いていたら、何時まで経っても鬼に捕まることはない。

これと同じように大きな刺激で会っても、そこにグローバルワークスペースのトップダウン処理(注意)が働いていなければ「意識的な知覚」になることはない。

つまりこのモデルの示すところは、何かの刺激が「意識」されるためには前頭前野を中心としたシステムと一度繋がる必要があるということなのかなと思いました。

【要旨】

「非意識的な知覚処理について知ることは、意識的な知覚の成立を理解する上で重要なことであると考えられる。本稿では閾値以下の知覚について調べた様々な研究について批判的にレビューを行う。様々な異論があるものの非意識的な知覚情報によって様々な知覚処理が引き起こされることが知られている。知覚閾値以下の文字や数字を提示することで知覚に影響を与え、またそれに対応する皮質活動が惹起されることが実験により確かめられている。こういった閾値以下の弱い刺激によって惹起される皮質活動は容易に減弱するが、必ずしも強い刺激が意識されるとは限らない。我々はある刺激が意識されるためには以下の2つの条件が必要であると考える。一つは刺激が十分な強度があること(マスキングによって妨げられうる)、さらに一つはトップダウン的な注意を受けること(注意が他に向いている時は妨げられうる)である。このような見方によって非意識的な処理が2つのタイプに分けられると思われる。すなわち閾値以下の状態と前意識の状態である。この非意識状態をこのように2つに分けることが、今後の意識と皮質活動の関連を研究していく上で有用であると考える。」

参考URL:Levels of processing during non-conscious perception: a critical review of visual masking.



コメント

脳と社会組織というのはよく似ていると思うのだけれども

こういうのは会社組織かなにかの意思決定とも似ていて

現状を変えたいと思ったら、まず鬼に一度取り込まれなければならないというか

外に立って批判しているだけだと、なかなか変化というものは望めないけど

一度、敵対する相手の中に意図的に取り込まれ、その内部から相手を取り込んでいくというか、取り込んでいくというか

何かの本で誰かに影響を与えたかったら、まずあなたがその人から影響を受けなさいというのを読んだことがありますが

時には取り込まれるのも大事なのかなと思いました。

 

 

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