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扁桃体は名選手か名監督か?

「名選手、名監督にあらず」ということばがあります。

選手の仕事と監督の仕事は必ずしも同じではない。選手が向いている人もいれば、監督に向いている人もいる。

今まで2ヶ月以上、扁桃体や皮質下経路の話を取り上げて来ました。

選手か監督かでいけば、扁桃体や視床枕、つまりは皮質下経路といわれるあたりはどちらの方に当てはまるのでしょうか。

従来の定説だと、足の早い選手といった役回りとして見られていたのではないかと思います。

繰り返し述べてきたように感覚の情報処理には二通りあるそうです。

つまり順繰りに一次視覚野、二次視覚野・・・高次領域と抜けていく伝達速度の遅い皮質経路と

途中をショートカットしてダイレクトに高次領域に繋がる高速の皮質下経路、このふたつがあるということが述べられてきたと思います。

情動的な刺激というのは時として生存に関わるような情報なので、こういった情報はまず第一に高速な皮質下経路によって処理される、こういった考え方が現在の主流だったのではないかと思います。

つまり皮質下経路というのは足の早い選手であり、これが情動情報の処理を行う、こういった見方ではないかと思います。

今日取り上げる論文は従来のこういった見方をひっくり返すものです。

ではどうひっくり返すか?

この論文でいけば皮質下経路の本筋は選手業務ではなく、監督業務だというものです。

情動情報の処理は皮質下経路が主というのは間違いで、従来脇役として扱われてきた皮質経路で十分情動情報処理ができるという主張です。

なぜ伝達速度の遅い皮質経路が情動情報の処理の主役になれるのでしょうか。

この論文によると皮質経路の情報処理というのは今まで言われてきたほど遅くはないということが述べられています。

なぜか?

それは皮質経路というのは今まで考えられてきたように一次視覚野→二次視覚野・・・と言ったかたちだけでなく、

一次視覚野→四次視覚野、あるいは一次視覚野→五次視覚野といったショートカット経路が数多くあるからだそうです。

この図がよくまとまっていてわかり易かったです。

上図参考URL

こういった経路があるゆえに、今まで情動情報の処理において脇役と思われていた皮質経路というのは十分花形選手としての役回りを果たしているというのがこの論文の主張だと思います。

では今まで情動情報処理の主役として見られていた皮質下経路は何をしているのでしょうか。

皮質下経路、具体的に言えば扁桃体なり視床枕といわれる領域ですが、この図やさっきの図を見てもらえば分かるように、皮質のいろんな領域に幅広く相互連絡を持っています。

ちなみに視床枕がpulvinar、扁桃体がamygdalaです。

上図参考URL

上図参考URL

この幅広い投射を通して、様々なショートカット経路からなる複線上の皮質経路の働きを監督するのが皮質下経路の役回りなのではないかということが述べられています。

【要旨】

「上丘と視床枕を通り扁桃体へ繋がる皮質下経路は非意識化の情動的な視覚刺激の処理に関わる経路であると考えられてきた。本稿では解剖学的見地および生理学的見地からこの皮質下経路がヒトにおける情動的な視覚刺激の処理に重要な役割を果たしていることについて述べる。この皮質下経路における視床枕や扁桃体の役割は情報の伝達よりも情報経路の調整にあり、この機能によって情動的な視覚刺激の皮質ネットワークでの処理が促されると考える。この修正されたフレームワークにおいては皮質ネットワークが情動処理のおいて重要な役割を果たすとみなされる。」

参考URL:Emotion processing and the amygdala: from a 'low road' to 'many roads' of evaluating biological significance.



コメント

こういう物言いはどうかと思われそうだが、結局のところ、皮質下経路というのは、職場のお局さま的なものなんだろうか。

肩書きもなければ直接的な権力もないのだけれど

いちはやく情報が入ってきて、いろんな経路から肩書きと権力を持つ男性的なマッチョ回路に圧力をかける、操作する、支配する

直接的な業務は担わないけど、直接的な業務を担うマッチョ経路を間接的に調整する、そんなお局様的なものなのかなと思いました。

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