
なぜ私達の脳は同情するのか?
気を引くだとか同情を誘うという言葉がありますが、私達の脳はどのようにして他人に同情しているのでしょうか。
なぜだか分からないけど、泣いている人を見れば自分も悲しくなるし、痛がって悶えている人を見れば、私達まで苦しくなってしまう、これはいったいどういうわけでしょう。
今日取り上げる論文はこの同情の仕組について脳のネットワーク的な観点から考えたものです。
ヒトの脳というのはいろいろなネットワークからできているそうなのですが、その一つとしてミラーニューロンネットワークというものが考えられているそうです。
これは他人の動きを自分の動きとして捉えるようなシステムで、このシステムがあるので、他人の動きを見ると、それが自分の脳の中にマッピングされ、あたかも自分が動いているように感じてしまう、そういったネットワークだそうです。
もう一つのネットワークとして辺縁系ネットワークというものが考えられています。
口絵を見て頂ければわかると思うのですが、大脳新皮質の下の方にある領域を中心に構成されている情動脳とも呼ばれている領域です。
これは主に喜んだり悲しんだりという情動に関わっています。
今日取り上げる論文によると
①ミラーニューロンネットワークと辺縁系ネットワークは繋がっている
②島皮質がその重要な中継地点になっている。
③この連結により動作情報→(島皮質)→情動喚起で同情が湧き上がることが考えられる
ということが述べられています。
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【要約】
私達はどのようにして他人に同情しているのだろうか。他人に対して同情するためには、まず他人の動きを理解してそれを情動的な活動とつなげるようなメカニズムが必要であると思われる。上側頭皮質と下前頭皮質からなるネットワークは動作の表象を作り上げ、それを島皮質を介して情動システムへ情報を送っている。その意味で島皮質というのは情報の伝達上重要なポジションにある。今回機能的MRIを使用し、被験者が情動的な表情を模倣している時と単に観察している時の二つの状況での脳活動を測定した。結果、両条件で共にお内ネットワークの賦活が見られたが、模倣条件では下前頭皮質を含む運動前野と上側頭皮質、島皮質、扁桃体に強い活動が見られた。これらの結果から私達が他者に対して同情するときには動作の表象に関わるネットワークが駆動することが重要でこれが情動の調整に関わっていることが考えられた。そして島皮質がこのメカニズムで重要な役割を担っていると考える。
参考URL:Neural mechanisms of empathy in humans: a relay from neural systems for imitation to limbic areas.
コメント
感覚と感情というのはきれいにわけることができるんだろうか。
例えば「旨い!」という感じなんてどちらかというと感情、情緒に近い感覚なんじゃないんだろうか。店で飲む酒と家で飲む酒の味が同じボトルから注いでもまるで違うように。
「痛い!」という感じも感覚というよりはきっと感情寄りの何かなような気がするのだけれども
こういった旨い、痛いというような感じには島皮質の活動が関係するそうで
旨い、痛いに関わらず、いろんな感覚というのは少なからず感情を含んでいるのかなあと思いました。