半側空間無視とフィルタリング、脳内ネットワーク
今日取り上げる論文は、視覚的注意に関与する脳領域について調べたものです。
視覚的注意には自分で意識して何かに注意を向ける自発的なものと刺激によって駆動される受動的なものの二種類があるようです。
結論から述べると
①自発的な注意と受動的な注意の二種類のシステムを協調させているのは側頭頭頂接合部と前補足運動野を含む前頭葉腹側領域である。
②この2領域で視覚情報のフィルタリングがなされ、フィルタリングを通った情報が実際の能動的注意運動(対象に向かって目を向ける)を司る領域に送られる。
③この能動的注意運動を司る領域は頭頂葉背側部、前頭眼野、運動前野である。
④半側空間無視では半側に注意を向けられない症例と半側を知覚できない症例があるが、前者においては能動的注意に関わる領域が、後者においてはフィルタリングに関わる領域が損傷されており、この仮説的モデルとも合致している。
というものです。
これは例えば駅まで赤い服を着て黒い帽子をかぶった女の人と待ち合わせをしている時には、意識しようとしまいと、頭頂側頭接合部と腹側前頭葉のあたりは赤い服を着た男や、黒いかぶりものをしたおじさんといったものにバンバン反応して(無意識化にフィルタリングして)、
赤い服、黒い帽子、女の人と3つ揃った時に自覚的な注意が立ち上がり、前頭眼野とかその辺が活動する、ということだと思います。
おなじ半側空間無視でも全然左側が分かってくれないのと、左側を認知しようとすれば認知できるんだけれども注意が左側になかなか向かない症例があると思うのですが、その辺がこのモデルで説明できるのかなと思いました(同じ半側空間無視でも頭頂葉の上の方(背側頭頂葉)の病変なのか、下の方の病変(頭頂側頭接合部に掛かりそうな腹側よりの頭頂葉)なのかなど)。
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【要旨】
「視覚的注意には何らかの対象に向けて自発的に向けられるもの(自発的コントロール)と、刺激によって駆動されるもの(刺激駆動コントロール)の2種類がある。しかし多くの場合はこの二種類のシステムが相互作用しながら注意が展開されると考えられている。自発的に注意を向けている対象でなくても、その中の性質の一部が重なるものがあれば注意を引く現象があり、これを随伴性注意と呼ぶ。今回機能的MRIを使用し調べたところ、この随伴性注意に伴う活動が側頭頭頂接合部と前頭葉腹側部に認められた。この結果からこれらの領域が自発的コントロールと刺激駆動コントロールの相互作用の調整を行っていることが考えられた。」
参考URL:Coordination of voluntary and stimulus-driven attentional control in human cortex.