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利他行動はなぜ必要か?

計算高いとかずる賢いとかいう言葉もありますが、ヒトというのはどこまで損得だけで動ける生き物なのでしょうか。

世の中を見ていると損得だけで説明がつかないような事例が数多くあるのではないかと思います。

赤穂浪士の討ち入りは果たして合理的な行動でしょうか。

チベット僧の焼身自殺は合理性からどう説明できるのでしょうか。

組織において得にもならない足の引っ張り合いをするのはなぜでしょうか。

これらの非合理的な行動は、バラバラに見えるような気もしますが、読み返してみると「不公平を許さない」という行動でみればひとくくりにできるような気もします。

ヒトは時に自己滅却的な美しい利他的行動をとることもあれば、時に見苦しい足の引っ張り合い、出る杭を打つ、いわれのない非難、いろんな見るに耐えないことをする。

こういった良くも悪くも非合理的な行動は「公平を好み、不公平を嫌う」というヒトの性質で説明がつくのではないかと思います。

今日取り上げる論文では、この「公平を好み、不公平を嫌う」ヒトの性質は進化の過程で獲得した本能的なものではないかということが述べられています。


「近年の研究により、ヒトは直接関係を持たない人間へも利他的行動を行うことが示されており、これは従来の親族間での利他主義や相互的な利他主義では説明ができないものとなっている。強い互酬性という概念で、このヒトに見られる協力行動と、非協力行動に対する罰行動-これは時にコストに見合わないものであるが-について説明することができると思われる。本稿ではこの強い互酬性がヒトの利他主義的習性を説明できるエビデンスについて示す。また人類の発達初期において、この強い互酬性を持った人類がその安定した行動戦略により利己的な人類を凌駕し、反映してきたのではないかと考える。多くのエビデンスは行動実験によるものだが、こういった強い互酬性は日常生活の様々な場面でも見られるものである。」

参考URL:Explaining altruistic behavior in humans.

コメント

「公平を好む族」と「自分が良ければそれがいちばん族」が長期間ゲームをすると

最終的に「公平を好む族」がゲームで大勝ちし、「自分が良ければ族」は自滅していくことがゲーム理論から示されているそうです。

進化の過程で利他的(公平を好み不公平を嫌う)なヒト科が利己的なヒト科と競争する中で前者が生き残り、

この前者が利他的なルール、利他的な社会を作り、

その社会がさらに利己的なヒト科の生存を許さず、利他的なヒト科の生存を高めるような形でヒト科と社会は共進化してきたのではないかということが述べられていて

稽古をしないで勝っちゃう朝青竜やルールそのものを小馬鹿にしたホリエモンといった面々は進化の過程で排斥されていったということになるんだろうか

ルールを守りなさいとは小さい頃から言われるものの

ルールというのは本質的に他者の欲求、欲望であって正義ではないんだろうなと思ったりもします。

 

 

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