
抑うつ・不安障害に祈りは効果的なのか?
祈りというのは古今東西、ヒトがいるところには必ずあるものですが、しかしこの祈りというのは本当に効果があるのでしょうか。
今回取り上げるのは、抑うつ症状や不安症状に対しての祈りの効果を検討したものになります。
方法
対象者
・対象になったのは、臨床上、抑うつ状態が認められた精神科外来の女性患者44名
・患者は無作為に、祈りを受ける介入群と、祈りを受けない対照群の2群に振り分けられた。
介入
・祈りは、キリスト教系の60代の祈祷についての有資格者によって、被験者と対面する形で行われた。
・祈りは続けて6日間行われた。
・1回目は90分、その後は60分ずつ行われた。
・祈りをするに当たり、被験者が個人の歴史的背景について語った。
・被験者が置かれた状況を勘案した上で、祈りの内容が決められた。
評価
・介入前、介入終了時、終了1ヶ月後、終了1年後に心理評価が行われた。
・評価は、ハミルトン抑うつ尺度、ハミルトン不安尺度、楽観性尺度、日常のスピリチュアルな体験尺度にて行われた。
・対照群は、介入群の最終評価が終わった段階で、祈りによる介入が行われ、その効果が測定された(クロスオーバー試験)。
結果
・祈りによる介入後、抑うつ症状、不安症状に改善が見られ、その効果は1ヶ月後、1年後も持続していた。
考察
・悔い改めの祈りを行う中で、過去の出来事に対する否定的な感情が取り除かれたことが影響している可能性はある。
・盲検化されていないことや、対象者が女性であること、キリスト教が熱心な地域で行われていることもあり、結果は必ずしも一般化で きないと考える。
私的考察
祈りが鬱や不安に効くかどうかについて調べたものですが、この論文を見る限り、1対1の密度の濃い、集中的な祈りは、大分しっかりとした効果があるように思えます。
機序については、どうとも言えないのですが、生きる不安や苦しみというのは、その人が生きてきた歴史の中で感じられ、解釈されるものである以上、
祈りの過程の中で、自分の人生という物語の解釈が変わったのであれば、不安や苦しみが変わるということもあるのかな、と思いました。
【参考文献】
Boelens, P. A., Reeves, R. R., Replogle, W. H., & Koenig, H. G. (2012). The effect of prayer on depression and anxiety: maintenance of positive influence one year after prayer intervention. International journal of psychiatry in medicine, 43(1), 85–98. https://doi.org/10.2190/PM.43.1.f