あなたの顔と親友の顔を脳は区別できるのか?
毎晩鏡を覗きこんでいた白雪姫の継母や、水面に写った自分の顔にキスして溺れ死んだナルキッソスの話でもないのですが、ヒトというのは自分の顔に特別な関心を抱いています。
自分の顔がどういったものかというのは一歳に満たない赤ちゃんでも認識できるそうですが、この自分の顔の認識というのは脳の中でのどのように処理されるものなのでしょうか。
今日取り上げる論文はこの自分の顔を認識している時の脳活動について調べたものです。
実験では自分の顔、親しい友達の顔、見知らぬ他人の顔の三種類の写真を見せ、その時の脳活動を測ったのですが、驚くべきことに基本的な活動パターンは自分の顔と親しい友達の顔では大きく変わらなかったそうです。
自分と親しい人、とりわけ身内が苦しんだり泣いたりしている時はついつい感情移入が大きくなってしまいますが、これは親しい人の顔というのは自分の顔を見ている時と同じように脳が活動するためなのかなと思いました。
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【要約】
自己認知に関わる神経基盤を探ることは心理的、社会的な認知機能を考える上で重要なテーマである。先行研究からは右半球の前頭葉と頭頂葉が自分の顔の認知に重要であることが示されているが厳密な設定でなされた研究は少ない。本研究の目的は自分の顔の認知に関わる神経基盤を探ることである。実験では12名の被験者を対象に、自分の顔と見知らぬ他者の顔、よく知っている知人の顔の写真を見せている時の脳活動を機能的MRIを使用して測定を行った。結果、ベースラインと比較して見知らぬ他者を見ている時には後頭葉下部領域の活動が見られ、これはこの領域が後頭葉から側頭葉における下部領域が全般的な顔認識に関わるという先行研究と一致する結果となった。見知らぬ他者とよく知っている知人の顔を比較した場合、島皮質や側頭葉中部、下頭頂葉、内側前頭葉の活動が見られ、これは親しい知人の顔の認知処理は単なる顔の処理と異なるという先行研究の結果と一致する結果となった。自分の顔の認知を親しい知人のそれと比較した場合、右上前頭回と右内側前頭葉、右下頭頂葉と左中前頭回に活動の増加が認めれ、前帯状皮質において顕著であった。このような結果から自分の顔の認識においては従来言われていたように右半球でなされるのではなく両半球の働きであること、また社会的認知に関わるとされるミラーニューロンネットワークが活動することが示された。また内側の前頭頭頂領域の活動は親しさを示す指標になりうることが考えられた。さらに自分の顔の認知と親しい他者の顔の認知の違いはわずかであることが示された。
参考URL:Neural substrates for functionally discriminating self-face from personally familiar faces.
コメント
長年連れ添った夫婦は顔が似てくるというけれど
これは見方を変えれば、ヒトはみな自分の顔が大好きで
自分の顔と似たヒトを結婚相手に選ぶということも考えられないだろうか。飼い犬を選ぶときの主人の選好行動でもないけれど。
もう少し詳しい話をすると
顔の認識全般には側頭葉から後頭葉にかけての下部領域に顔そのものによく反応する領域があり、これは誰の顔を見ても反応するんだけれども
自分の顔や親しい知人の顔を見ている時には右半球のミラーニューロンシステムと右のデフォルトモードネットワーク(内側前頭頭頂葉)に加えて左半球の語彙処理(記号処理)に関わる領域がそれに加えて活動し
さらに自分の顔ということではそこに加えて情動処理に関わる前帯状皮質の活動が少し高くなる、そういったことではないかと思います。
他人を愛したり、他人を害したりするのも、自己愛、自己嫌悪の裏返しなんだろうか。