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「自伝的な記憶における機能的神経解剖学:メタアナリシス」

「わたしとは何か?」という質問は難しいものですが、「記憶」というのはひとつの解答になるものではないかと思います。

心理学では自分自身の記憶、すなわち自分が何をしてきてどうやって生きてきたかという記憶は自伝的記憶と呼ばれますが、この自伝的記憶というのは「わたし」というものを考える時大きな要素になるのではないかと思います。

今日取り上げる論文はこの自伝的記憶に関わる脳活動について調べたものです。

脳の中には「わたし」システムのようなものがあり、これは「わたし」に関わること、それが自分の名前だったり顔だったり性格だったり友人だったり肩書だったり、自分関係の様々な認知に関わるようなシステムがあるのですが、

この自伝的記憶の処理にも「わたし」システムが関係していること、またその中でも左半球の「わたし」システムのほうが自伝的記憶の想起に際して強く働いていることなどが述べられています。

【要旨】
自伝的記憶とは複雑な現象であり、その構成要素としてエピソード記憶や自己参照能力、視覚的イメージや感情、実行機能、意味処理など多くの認知過程が介在する。本稿では過去に行われた自伝的記憶に関する24本の研究を取り上げメタアナリシスを行った結果について報告する。この自伝的記憶に関わる脳の領域としては内側および腹外側前頭前野、内側および外側脳梁膨大後部/後帯状皮質、側頭頭頂接合部、小脳が挙げられ、全体的に左半球優位な活動となっていた。またこの自伝的記憶は記憶の年代や感情的要素、意味的要素などでその活動パターンが変わることを示す。自伝的記憶の回想に際してそれが情動的な要素が大きいものである場合、情動関係の領域の活動が高まり、認知関係の領域の活動が低くなることを説明する。

参考URL:The functional neuroanatomy of autobiographical memory: a meta-analysis.

コメント

自分の人生の記憶を自伝的記憶と呼ぶらしいのですが

昔のことを思い出すとよほど辛かった時代であっても割と楽しい思いでしか残っていなかったりしてこれはどういうことだろうと思ったり

あるいは記憶を封じ込めるという言葉もありますが、あまりに過酷な思い出は靄がかかったように具体的は何一つ思い出せないという現象もあるようで

自伝的記憶というのは脳という編集者に相当いじられたものなのかなと思ったりします。

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