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「前部前頭前野内側部と価値判断:機能的MRIによる研究」

人は何かと選り好みする生き物です。

この宗教は好きだけどこの宗教は嫌い。このブランドは好きだけどあのブランドは嫌い。この国は好きだけどあの国は嫌い、あの政党は好きだけどこの政党は嫌い・・・などなど枚挙にいとまがないのですが、この人の選り好みというのは脳科学的に見るとどのように考えることが出来るのでしょうか。

今日取り上げる論文はこの選り好みに関わる脳活動について調べたものです。

脳の中には「わたし」システムのようなものがあり、これは自分自身のことを考えるとき全般に働くようなシステムだそうです。

今日取り上げる論文は様々な条件で脳活動を測定したのですが、このシステムが選り好みをするときに関わっていることが示されています。

付き合う人が変わると好みが変わるということもありますが、こういった選り好みの変化は「わたし」システムが変化した結果として捉えられるのかなと思いました。

【要旨】
本研究は価値判断に関わる神経基盤について調査したものである。価値判断は外部刺激もしくは内部刺激を自己の内的な基準にそって価値付けする行為であるが、これは意思決定を行う上で基本的な認識要素となっている。今回機能的MRIを使用して価値判断に関わる神経基盤についてエピソード記憶や意味記憶の想起と比較し検討を行った。結果価値判断に関わる領域として前部前頭前野内側部(ブロードマン9/10)、楔前部下部(ブロードマン23/31)、左下前頭回(ブロードマン45/47)が挙げられた。この内楔前部下部は記憶に蓄えられた情報やリアルタイムで送られてくる情報を取りまとめる役割を果たし、前部前頭前野内側部は自己参照処理に従い価値判断を行っていることが考えられた。

参考URL:The anterior frontomedian cortex and evaluative judgment: an fMRI study.

コメント

もともとパウロという人はキリスト教を迫害する側の人だったけれども、砂漠で倒れ失明しその後の回復経験を通して熱心な伝道者になったそうだけど

パウロに限らず何かのきっかけで思想を変える人というのは多いと思うのだけれども、この思想の変化というのはどういう仕組みで起こるんだろうか。

今日の論文のことをもう少し詳しく書くと

この「わたし」システムというのはデフォルトモードネットワークという名前で呼ばれていて

このデフォルトモードネットワークの中でも前頭前野内側部の前の方(前頭極の内側面)と楔前部の下方の領域(頭頂葉の内側面)が大事で

楔前部の方は過去の記憶や現在の状況といったいろんな情報を取りまとめて、価値判断を下すのをサポートし

前頭前野内側部の方は自分が何者かという認知処理を通して、それが好きか嫌いかという判断を下すという仕組みなのではないかということが書かれています。

自分が何者かというのが好き嫌いのベースならば

マイフェアレディでもないけれど案外着る服や話し言葉を変えるだけでも好みというのは変わりうるのかなと思ったり

あるいはよほどひどい目にあって自己否定を強いられる中で価値基準が変わるというのはよく聞くけど

いずれにしても好き嫌いのベースというのは自分が何者かというその辺の認識にあるのかなと思いました。

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