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「自己想起の神経相関」

ピカソは時代時代によって青の時代や薔薇色の時代というように色調の異なる作品を残したそうですが、ピカソでなくても私達の人生も振り返ってみれば灰色の時代だったりばら色の時代だったりという感覚で思い出せるのではないかと思います。

しかしながら天気がそんなに違っていたわけでもないのに思い出の色調が異なるのはどういうわけでしょうか。これは脳科学的にどのように考えることが出来るのでしょうか。

今日取り上げる論文は自分自身のことを考えている時の脳活動について調べたものです。

実験では自分に関係する事柄を思い出している時と一般的な事柄を考えている時の脳活動を比較したのですが、自分のことを考えている時にとりわけ強く活動する部分があることが示されています。

この部分は記憶と情動の両方と強いつながりを持っており、自分自身に関することを思い出す時には記憶+情動という形で想起するため、自己想起というのは感情的な色彩を帯びるのではないかということが述べられています。

【要旨】
自分自身の感覚について振り返られることは自意識が成り立つ上で重要な要素である。本稿では自己想起に関わる神経活動を機能的MRIを使用して調査した。被験者は11名で実験では被験者自身の能力や性格、態度といったものを想起している時の脳活動と、自己とは関係のない一般的な意味的知識を想起している時の脳活動を測定した。結果内側前頭前野と後帯状皮質に自分自身に関する情報の想起に伴う脳活動の増加が認められた。これらの結果は意識障害を呈した脳損傷患者のデータとも一致しており、内側前頭前野と後帯状皮質が自己に関連した思考に関わる神経システムを構成していることが考えられた。

参考URL:Neural correlates of self-reflection.

コメント

人の感覚には共感覚というものがあって

これは音が色的なものとして感じられたり、形が味覚的なものとして感じられるような現象のようですが、芸術家肌の人はこの共感覚を持っている人が多いそうです。

ブルーな気分ともいいますが、感情と色彩感覚というのはどこかで繋がっているのかなと思いました。

なお研究について詳しいことを書くと自己想起に関して活動が強くなったのは内側前頭前野と後帯状皮質で、いわゆるデフォルトモードネットワークを構成する領域です。

この内後帯状皮質は記憶関連領域や情動関連領域と密な接続があり、自分のことを思い出す時にはこの両方から情報を引っ張ってくるのではないかということが述べられています。

なにかショックなことがあると人生から色が消えたような感じを受けるのはショックを和らげるために情動システムが抑制されているせいなんだろうかなどと考えました。

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