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「機能的MRIを使用した記憶想起過程の分離:プライミングは認知的な記憶を補助しないことを示すエビデンス」

世界にはいろんなカードゲームがありますが日本の競技かるた(百人一首)というのは中々特殊なものではないかと思います。

これは刺激に対する反応時間を競い合うものだと思うのですが、こういった能力はどうやって高めることが出来るのでしょうか。

一つは愚直に百人一首の歌と絵をしっかりと頭に叩き込むことでしょう。一字一句しっかり頭に刻みこむことで反応時間というのは短くなりそうです。

もう一つはまわりの人にヒントをいってもらうことでしょう。これは競技の時には出来ませんが、それでも「恋しさ」「切なさ」「夕暮れ」「川岸」などと横でつぶやいてくれる人がいれば、そういったキーワードと関連するような絵札を見つけやすくなるということはあるかもしれません。

心理学ではこの後者のような現象をプライミング効果といっているようです。

これは事前に秋、果物、赤いなどの言葉を伝えておくと“リンゴ”という言葉に反応しやすくなるような現象で、つまりは先行刺激(秋、果物、赤)が後続刺激(リンゴ)の情報処理を早めるような現象を指すようです。

今日取り上げる論文はこのプライミング効果に関わる脳活動を調べたものです。

刺激に対する反応時間を短くするためにはプライミング効果(潜在意識)を用いるか、あるいはしっかり事前に覚えておくか(顕在意識)という方法があると思うのですが、これら二つは結果が似ていても関わっている脳の領域が違うことが示されています。

 

【要旨】
今回事象関連MRIを用いて記憶の想起における神経活動について調査を行った。従来の研究から顕在的な記憶の想起は外側及び内側頭頂葉、中前頭回背側領域、前頭前野前部領域が新規の言葉より既知の言葉に強く反応することが示されてきた。また暗黙的な記憶については左側頭葉と下前頭回腹側および背側領域が新規の言葉に対して既知の言葉よりも強い反応を示すことから、これらの領域の活動が“意味的なプライミング“に関わることが考えられている。本実験では顕在的な記憶の想起と意味認知課題の両方を行いその時の脳活動の測定を行った。結果プライミングに関連しているとされている領域は意味認知課題の時だけに賦活されたが顕在的な記憶の想起に関わるとされる領域は両方の課題で賦活が認められた。これらのことからプライミングは顕在的な記憶の補助にはならないことが考えられた。

参考URL:Dissociating memory retrieval processes using fMRI: evidence that priming does not support recognition memory.

コメント

このプライミング効果についてはいろいろおもしろい実験があって

代表的なものとしては被験者に語学力の実験と嘘をついて、しわだらけ、心配、ふるい、寂しいなどという老人を連想させるような単語を見せて

実験室からの帰り道の歩く速さを測ってみると老人関係のものを見せられた被験者は歩くのが遅くなっていたというものがあります

小さいころいじめられっ子だった反動か、

折にふれてアウトローもののノンフィクションをよく読むのですが

こんな本を読んだ後というのは意味もなく車の運転が荒っぽくなったりしてこれもプライミング効果なのかなと思ったり

あるいは自分を変えたかったら付き合う人を変えなさいというのがありますが

これは付き合う人という外部の環境のプライミング刺激を変えることで行動変容を促すものなのかなと思ったり、そんなことを考えました。

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