フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

後天的な学習としてのミラーシステム

誰かが何かをしているのを見ている時も、またそれと同じ動作を自分が行っている時も等しくコードする、そんなシステムをミラーシステムというらしいのですが、今日取り上げる論文は、このミラーシステムがどのように成り立っているのかについて調べたものです。

結果から言うと、このミラーシステムというものは先天的に備わっている生得的なものではなく、後天的な学習によって成立しているものだということを示したものです。

他人の手が動くのを見れば、どんな時であれ自分の手を動かす領域が活動する、というわけではなく、例えば足を動かす動画に合わせて自分の手を動かす課題を繰り返し行わせた後に、足を動かす動画を観察させると足の領域ではなく、手を動かす領域の活動が見られるといった実験を行なっています。

医学書・医学専門書、看護・薬学などの教科書・専門書の専門買取サイト「メディカルマイスター」

【要旨】

「ミラーシステムとは、他者の活動をあたかも自分の活動のように捉える皮質活動であり、人の社会的認知能力の発達を決定づけるものとして考えられている。このミラーシステムの重要性にも関わらず、その起源については明らかにされていない。今回の研究ではミラーシステムの発達に感覚運動経験がどのように影響するのかについて調べた。以下に述べる二つの課題のいずれかを練習した後、手と足の動きを観察した時の皮質活動がどのようになっているかについて機能的MRIを使用して研究を行った。一つ目の課題では被験者は手や足を動かす動画を提示され、それを真似をして自分の手や足を動かすように指示された。さらにもうひとつの課題では。被験者は同じく手や足を動かす動画を提示され、手が提示された時は足を、足が提示された時は手を動かすように指示された。この異なる課題を行った後、それぞれに手を動かす動画、脚を動かす動画を観察させた時の皮質活動を比較すると、足を動かす動画を観察した時に手の運動に関わる領域の活動が増加していた。この結果から、ミラーシステムの性質というのは生得的なものではなく、後天的な感覚運動学習に基づくものであることが考えられた。」

参考URL:Through the looking glass: counter-mirror activation following incompatible sensorimotor learning.

コメント

ミラーシステムが後天的なものという考え方は義肢やBMI(brain-machine-interface)と絡めていろいろ考えられそうな気がします。

ちなみにタイトルの ”Through the Looking-Glass” はルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の続編、『鏡の国のアリス』の原題 ”Through the Looking-Glass, and What Alice Found There” から取られているようです。

「鏡を抜けて」というこの論文の表題は、おそらく実験で設定されたあべこべ(手と足が逆)設定の世界と、ミラーシステムというひとつの概念体系、この二つを抜けたところに見えるもの、というニュアンスがあるのかなと思ったのですがどうなんでしょう。

ちなみにこのミラーシステムが生得的なものではなく、後天的に経験によって構築されるものだという考え方ですが

いま生後4ヶ月の子供がいて、大分状況に合わせて笑ったり、ぐずったりできるようになったのですが

今さっき、朝ごはんを食べて、食器を下げようとやおら立ち上がると、ご飯の間中、構われずに、ゆりかごにチョコねんと座らせられた我が子はこちらを見て、両手を上げてニコニコ-と笑いました。

しかし次の瞬間、子供に構わず、台所に抜けていった父親の姿を見て、上げた両手をパタンとおろし、笑顔も一瞬で消えました。

多分、寝返りもできない我が子の頭の中には、父親が立ち上がる→自分をかまってくれるという図式があって、

そのことから、父親の立ち上がり動作から「自分をかまってくれる」という意図を読み取り、喜び、そして外れてがっかりしたと思うのですが

まだ首が座った程度の乳児が立ち上がり動作に対応するミラーシステムがあるわけもなく

運動を見ることによって、自分の運動系が賦活されて、そのことで相手の意図を推察できる、というミラーシステムの考え方ってどうなんだろうと思ったりしました。

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします