意識と腹側視覚経路の関係とは?
今日取り上げる論文は意識について調べたものです。
普段生活していると、脳は絶えず認識活動をしているのではないか思います。
円筒状の透明な物体をみては「コップだ」と思ったり、「ダダダダーン」という音を聞けばベートーベンの交響曲かと思ったり、絶えずいろんなことを認識している。
本来コップというものがあるわけではない。あるいは「運命」という交響曲があるわけでもない。
ある特定の構造を持った電磁波(光)に対して「ああ、これはコップだ」と認識する・
あるいはある特定の時間的構造を持った音波に対して「これベートーベンのあれだよね」みたいな感じで認識する。
そう考えると、そこにあるのは物理現象だけで、その物理現象に対してヒトの脳が何かを認知することで「コップ」や「ベートーベンのあれ」が立ち上がってくるのではないかと思います。
今日取り上げる論文はそのヒトの認知、いいかえれば意識的な知覚と脳の関係について調べたものです。
ヒトの意識的な知覚というのがどこでなされるか、どういうふうなされるかということはよく分かっていないそうです。
ただ視覚だけの話でいけば、視覚の腹側経路というのが「意味」の処理に関わるのではないかということが言われています。
腹側経路というのは視覚野から側頭葉の下の方に流れていく経路です。
この側頭葉の下の方は記憶や情動とつかさどる領域とつながって意味処理に関わると言われています。
それとは対称的に頭頂葉に回る背側経路は空間情報処理に関わると言われています。
この意味に関わるといわれる腹側経路ですが、ヒトが意味を認知していない時、つまり見えているけど知覚できていない時には、この部位が活動しているのか、あるいは活動していないのかということはよく分かっていなかったそうです。
この研究で行った実験の結果では、目に見えたものを意識的に知覚していない場合でも
意味処理に関わる領域が活動していることが示されています。
【要旨】
「顔に反応する脳領域は顔情報が意識的に知覚されるときに活動すると考えられている。しかしながらこの顔反応領域が意識的な知覚を伴わずに活動するかについては明らかになっていない。今回機能的MRIを使用して、顔を知覚させない条件下で実験を行いこのことについて調べた。結果、顔を知覚させない条件下でも顔反応領域である「紡錘状回顔領域」「後頭葉顔領域」および上側頭間溝が顔情報に対して反応していることが示された。このことから顔反応領域の活動には必ずしも意識的な知覚を伴わないことが考えられた。」
意識とか認識ってなんだろうと思うのですが
例えば目の前にパソコンがあって、横には赤ちゃんがいて、外ではかみさんが雪かきをしていてっていうふうに、今私は認識しているのだけれども
本当に目の前の現象が実在するのかどうかっていったら、ひょっとしたらマトリックスの映画みたいに全部脳内妄想劇場かもしれないという可能性はゼロではなくて
本当は実在するのは無数の素粒子から構成されるただの宇宙空間だけで
そのある種の構成に対して、この私の脳は子供だ妻だパソコンだ雪だと勝手に名前をつけては勝手に世界を作り上げているかもしれない。
そう考えるとひとつの世界が実在するというのは幻で、
本当は人の数だけ世界があるかもしれないわけで、
なんだこいつわけわかんねえと思ったとしても、それは私と彼が違う世界にいるからきっとしょうがないことなのかなと考えたり
あるいはこの異世界を辛うじて橋渡ししてくれることばというものは、やはりすごいなと思ったりします。
管人と話すということはすなわち異世界を旅するということなのかなと。
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