
脳の中の顔情報の階層処理とは?
帝国ホテルのドアマンというのは5000人ものお客様の顔と名前を覚えているそうです。
顔情報は下側頭葉で処理されるという話ですが、帝国ホテルのドアマンはどういう仕組みでいったい5000人もの顔を判別/認識しているのでしょうか。
今日取り上げる論文は下側頭葉の顔認識システムについて調べたものです。
それによるとどうやら5000もの顔がバラバラ、別々に処理されているということはどうやらなさそうです。
どうやら会社組織のような階層的な構造で処理されているようです。
若い人は分からないかもしれませんが、グーグルが出てくる前のヤフーの検索システムと似ています。
たとえばアルジェリアの情勢について知りたかったら
社会→ニュース→国際→アフリカ→アルジェリアの順でポチポチクリックする。
これは会社組織の
営業部→資材課→ネジ係→左まわしネジ担当職員
みたいな感じで階層構造になっている。
これがもし会社組織がヒエラルキーになっておらず、各々がばらばらに動いてたらどうなるでしょう。
「あなたは左まわしネジ担当ですか?」「いいえ」
「あなたは左まわしネジ担当ですか?」「いいえ」
「あなたは左まわしネジ担当ですか?」「いいえ」
・・・・
これを数百回繰り返した後にやっと左ねじまわし担当職員を捕まえられる。
これが上記の階層構造だとわずか3ステップで見つけられる。
そう考えるとバラバラになっているのと階層構造に収まっているのでは大きな違いがあると思います。
この論文ではサルが人やサルの顔を見ている時の下側頭葉の活動を調べたものです。
その活動パターンをみてみると、やはり会社組織のように、神経細胞集合が、時間軸にそって
サル
―|
ヒト―ヒトA
ヒトB
ヒトC―ヒトC笑う顔
ヒトC怒る顔
というふうに階層構造的に処理されていることが述べられています。
こういった階層構造に収まっているゆえ、ヒトは効率的に顔情報を認識できるのではないかということが考察で述べられています。
【要旨】
「サルの下側頭葉は顔情報のような複雑な形態に反応することが知られている。下側頭葉の単一の神経細胞の活動の発火パターンを測定すると、時間軸にそって様々な情報をコードしていることが示される。下側頭葉における神経細胞が集団レベルで時間軸にそってどのように活動するかについて調査した。結果、集団レベルではまず発火初期に粗大な分類に沿ってそれぞれの部位(サルの顔/ 人の顔)が活動し、その後詳細な分類に沿って(人の顔A/人の顔B/人の顔C‥)活動してることが認められた。このようなことから下側頭葉においては顔情報は階層的に処理されていることが考えられた。」
参考URL:Population dynamics of face-responsive neurons in the inferior temporal cortex.
マニュアルやエビデンス全盛の昨今ですが
ある国際評価で世界第二位にランクインした帝国ホテルにはマニュアルというものがほとんどないそうです。
マニュアルや階層構造、形のあるものにはめ込めば、それなりに上手く回るんだろうけど、あるところより先に行こうとするとそういったカタチが返ってじゃまをすることもあるのかなと思いました。
カタチを利用することはあってもカタチに縛られないように動けたらいいなと思います。
※一日一つ限定ですが、個人や非営利団体を対象に脳科学に関するご質問・調査を無料で行います。興味のある方はホームページの「お問い合わせ」ボタンからどうぞ。