女子の難問と意味問題
「わたしのどこが好き?」という質問が難しいのはなぜでしょう。
これはこの質問が「あなたにとって私の本質的な意味とはなに?」という意味合いを含んでいるからではないかと思います。
例えばリンゴを例にとって考えてみましょう。
あなたにとって林檎の意味とはなんでしょうか。
すっぱい
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赤い-RINGO-丸い
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なごむ
などなど、いろんな感覚記憶がRINGOに結びついている。
その結びつきの中心にほんわり浮かび上がるものがあなたにとってのリンゴの「意味」なのではないかと思います。
ではあなたにとってのサチコはなにかというと
きれい
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指が細い-SACHIKO-手が冷たい
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ことばがきつい
といったいろんな感覚記憶のタグがつけられる中心にほんわり存在するものが、おそらくあなたにとってのサチコの「意味」なのではないかと思います。
こう考えると「意味」そのものはいろんな感覚情報のタグが付けられる真っさらな紙切れみたいなものなのかなと思います。
「わたしのどこが好き?」というのは、それそのものには内容がない真っさらな紙切れについて説明しなさいということに似て、難しい質問なのかなと思います。
前置きは長くなりましたが、今日取り上げる論文はこの「意味」が脳の中でどう処理されるかについてふれたものです。
リンゴひとつとっても甘い、酸っぱい、硬い、重い、冷たい、いろんな体性感覚記憶と結びついてリンゴのイメージ、意味といったものが構成されていると思います。
これは脳の中のどのへんで構成されているのでしょうか?
視覚なり体性感覚なり嗅覚なりは視床を抜けて、いろんな経路を抜けて最終的に嗅内野という領域に届くそうです。
この嗅内野というのは海馬や島皮質で構成される情動-記憶システムの入り口に当たるような場所で、
ここにすっぱい、甘い、固い、冷たいというりんごに関する感覚情報のすべてが集約されるそうです。
こういったことからこの嗅内野が意味生成、意味認識に関わっているのではないかということが述べられています。
興味のある方はこの図がとても良くまとまっていて面白かったです。
ちなみにSC:上丘 LGD:外側膝状体 LP:視床後外側核 PR:嗅内野 TE2:側頭葉 BLA/Ce:扁桃体核 PnC:橋核
となっています。
【要旨】
「古典的な恐怖条件付けで非常に重要な役割を果たす扁桃体への視覚経路について研究を行った。恐怖条件付けは電気刺激のフットショックと光刺激もしくは匂い刺激で行い、その行動を評価した。条件付けを行った後に視床の外側膝状体と後外側核を損傷した場合には視覚による恐怖条件付けを完全に消失させることができたが、匂いによる恐怖条件付けを消失させることはできなかった。薬剤を同部位に注入して行った実験からもこの反応は神経系ろの損傷によるものではないことが示された。また薬剤を注入して神経染色を行ったところ扁桃体と皮質の間の並行する2経路が示された。この経路で重要なものはTE2と背側嗅内野および扁桃体外側核であった。これらの結果から古典的な恐怖条件付けでは視覚経路は、外側膝状体(視床)→V1,V2→側頭葉/嗅内野または後外側核(視床)→V2、側頭葉/嗅内野を介した間接的な視床-扁桃体経路または後外側核(視床)→扁桃体外側核のような直接的な視床-扁桃体経路で構成されていることが考えられた。」
むかし、むかし若いころ、
ほんの少し前に別れた(振られた)ばかりの彼女とそっくりな女の人が、コンビニで男の人と仲良く歩いているのを見つけて
そうとうドギマギして、他人の空似だ、いや本人かと気が気でないまま雑誌を立ち読みしていたのですが
ふっと横を過ぎていった時のシャンプーの匂いがやはりその子のもので、
ああ、やっぱり本人なのだなと思ったことがあります。
そんなことをふと思い出したのですが、重層的な感覚の集積が「意味」なのかなと思います。
「意味」ある人生を送りたいものです。
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