音響構造理解、意味処理、発話に関わるシステムとは?
今日取り上げる論文は音声処理の腹側経路と背側経路についてのものです。
視覚処理においては意味情報の処理に関わる腹側経路(視覚野→側頭葉)と空間情報の処理に関わる背側経路(視覚野→頭頂葉)が知られていますが、
音声処理も視覚処理機構同様に腹側経路(下まわり:意味処理)と背側経路(上まわり:音響構造処理して→発話運動へ)の二重経路で並行して処理されるのではないかということを詳しく説明したのが今日の論文です。
この図が秀逸で実にわかりやすいなと思ったので貼り付けておきます。
これを簡単に説明すると、音声情報そのものは右側優位とか左側優位というわけではなく、両側のオレンジ色の領域(上側頭回後部)に入ってくるようです。
このオレンジ色の領域から紫色の領域にかけて流れる経路(中側頭回後部および下側頭溝後部→中側頭回前部および下側頭溝前部)で意味処理がなされ、これがいわゆる腹側経路になるそうです。
この腹側経路は若干左優位ではあるものの、基本的には両側性のものだそうです。
またこのオレンジの領域から青色の領域に抜けていく経路で音響構造処理がなされて(頭頂-側頭接合部)発話運動(下前頭回後部、運動前野、前部島皮質)に繋がるようです。
この背側経路は左半球優位なものになっているようです。
また右半球の音声処理回路と左半球の音声処理回路は意味処理に関わる紫色の領域で左右で連絡しているそうです。
【要旨】
「言語処理がどのような過程でなされるかについては長年研究されてきているものの、機能解剖学的にこの過程を説明するには至っていない。これは言語処理過程に対する課題の効果が十分に検討されていなかったためであると考える。本稿では言語処理モデルとして二重経路モデルを提唱する。このモデルにおいては腹側経路は言語の意味理解に関わり、背側経路は言語の音響的理解に関わり、これを前頭葉の発話ネットワークに連絡するものとして捉える。またこの背側経路は基本的には両側性であるのに対し、腹側経路は左半球優位なものであると考える。」
参考URL:The cortical organization of speech processing.
コメント
なんだかややこしい図だとは思うのですが、暇な人は覗いていただけたらありがたいです。
このネットワーク図を見て、どこがネットワークの重要なハブ(中継地点)になっているかを考えると、左側の紫の最初のところ(中側頭回、下側頭溝の後ろの方)が大事そうな気がするのですが、どうなんでしょう。