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言語処理における背側経路と腹側経路

今日取り上げる論文は音声知覚がどのようになされるのかについて調べたものです。

視覚の場合、頭頂葉を回る背側経路(空間認知)と側頭葉を回る腹側経路(意味認知)が並行して走っていることが知られています。

今日取り上げる論文ではこの音声知覚においても視覚同様、背側経路(音のカタチ、並び)と腹側経路(音の意味)があるということを色々な実験データを元に説明したものです。

具体的な経路に関しては以下の要旨を読んでいただければと思うのですが、この論文で大事なのは背側経路をどのように捉えるかという点だと思います。

従来視覚における背側経路はwhere経路とも言われるように空間認知に関わる経路という解釈が主だったようですが、近年では視覚を運動に変換する経路ではないかということが言われているようです。

なぜならこの背側経路を通じて、網膜座標の空間情報が身体図式に基づいた空間情報に変換され、ここで変換された空間情報が実際の運動につながっていくという図式があるからだそうです。

つまり背側経路というのは単に空間認知に関わる経路ではなく、むしろ視覚-運動の変換に関わる経路ではないかというのが背側経路における近年の一つの見方だそうです。

この視覚経路における背側経路の解釈と同様に、音のカタチの知覚に関わる音声知覚の背側経路にしても最終的には腹側運動前野に繋がることで、この経路が知覚を運動に変換する経路なのではないかということが述べられています。

幼児が言語を学習する過程にこの経路が大きく関わっているのではないかということが述べられています。

遺伝子検査のジーンライフ<Genesis2.0>

【要旨】

「言語と脳の関係に関しては長年様々な研究がなされ、現在までに多くの知見が蓄積されたものの、それらを統合するようなモデルを構築するには至っていない。この状況を解決するために本稿では視覚の研究で用いられるモデルを援用し新たな枠組みを提示する。この枠組ではまず音声知覚は両側の上側頭回でなされ、その後二つに分岐する。一つは腹側経路で、これは上側頭回から腹外側に投射し中側頭回後部に達するものである。この経路も両側性のものであり、両側の中側頭回後部を介して両側の下側頭回と連絡し音声の意味処理がなされる。もうひとつは背側経路でこれは両側の上側頭回からシルビウス列後部の頭頂-側頭接合部に投射し、この部位を解して最終的に前頭領域に投射されるものである。この背側経路は音声知覚や音声生成にも密接に関わるものの、日常生活では必ずしも必要というわけではない。なぜなら、音声認知は日常生活場面においては主に意味処理的に扱われるためである。またこの腹側経路と背側経路はそれぞれ独立したものではなく、相互連絡を持つものであると考える。このモデルを用いて失語症で見られる様々な症状や文章理解がどのようになされるかについて説明を行う。」

参考URL:Dorsal and ventral streams: a framework for understanding aspects of the functional anatomy of language.

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