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ボンヤリしているときは脳は何をしているのか:記憶との関わり

記憶力がいいとか悪いとかいいますが、この「記憶」というものは一体何者でしょうか。

記憶と一言で言ってもその種類はいろいろあります。

あんなことやこんなことがあったなというようなエピソード記憶、

自転車の乗り方やスキーのすべり方のような運動記憶

リンゴやフライパンがどういうものかわかるという意味記憶、

その他もろもろ色んな種類の記憶があると思うのですが、これらの記憶はどのようにして脳の中に形作られるのでしょうか。

記憶のことを書いた文献を読んでいるとよくconsolidationという言葉に当たります。

日本語にピタッと張り付く言葉はないようなのですが、con-は一緒になること、solidは固いことなどと考えると、様々な記憶素子が集合して記憶がカチッと形になる過程ではないかなと自己解釈しています。

去年家族で動物園にいったという記憶であれば、車の中の様子や外の気候、その時家族で交わした言葉や、お外で食べたソフトクリームの味、いろんな記憶素子が集められて固められて一つのエピソード記憶として固着したり

あるいはサッカーであればボールをパスするときのカラダさばきであれば、軸足の力のかけ方や視線の向き、リズム、いろんな記憶素子が「パスするときのカラダさばき」という運動記憶として集められて固められて、一つのものとして固着する。

ドラクエでスライムがバーっと集まってキングスライムになるように、ふよふよした記憶素子が集まって固まることで記憶として固着する、こういった過程がconsolidationといわれる現象なのかなあと解釈しています。

さて前置きが長くなりましたが、今日の論文は安静時のデフォルトモードネットワークの活動、これは何もしていなくてぼんやりしている時の脳の活動について調べたものですが、この安静時脳活動は記憶の固着化(consolidation)に関わっているのではないかということを述べたものです。

以前述べたように安静時とはいっても脳は内側面を中心にフル回転しています。

特に記憶に関連する領域に活発な活動が認められ、この様子は安静時のあてのないぼんやり思考(あれどうなったかな、今日の晩御飯何にしようかな、昨日のあれ面白かったな、などの自発的な思考の流れ)に関与しているのではないかということがいわれていたのですが、この自発的なぼんやり思考というのは記憶の固着化(consolidation)と関係しているのではないかということが述べられています。

【要旨】

一般にヒトの脳は何かの行為を行うときにだけ活動すると思われることが多い。しかしながら近年行われている研究から脳の複数の領域が休んでいる状態に関わって活動していることが報告されている。本稿ではこの安静時の脳の活動について二つの補足的な仮説を示すものである。

参考URL:Functional imaging: is the resting brain resting?

コメント

consolidationについては以前に取り上げたこの論文が分かり良いと思います。

安静時のデフォルトモードネットワークの活動として、一次運動野が見られる研究があり

これは運動記憶の形成に一次運動野を含んだループの活動が必要であることから、

安静時の自発的な一次運動野の活動も広義の記憶形成の活動として見られるのではないかということが今日の論文で書かれています。

リハビリでもムリムリ同じ動作を繰り返し学習させるよりも、少し間をおいてからやったほうがうまくいくことがあると思うのですが

何かを覚えるためには何もしていない時間というのも必要なのかなと思いました。

 

 

 

 

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