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ミラーニューロンとデフォルトモードネットワークの関係とは?

人も動物も共に一人では生きていくことができません。

ハエにしろライオンにしろヒトにしろ、何らかのグループ、社会というものに属さなければ生きていくのは難しいと思うのですが、同じ社会と言ってもヒトの社会はその大きさや複雑性を考えても相当に特殊なものになっているのではないかと思います。

このヒト社会という特殊な社会で生きていくためには、空気を読んだり心を読んだりという特殊な技能が必要とされてくるのですが、こういった技能は脳のどの辺がどう活動して回っているのでしょうか。

脳には何もしていない時にもグツグツと活発に活動しているデフォルトモードネットワークといわれる領域があることが知られています。

何もしていないから何も考えていないというわけではなく、記憶・情動領域とリンクしてぼんやりしている時の自動思考(あれどうだったかな、今日の晩御飯どうしようかな、明日どうしようかななど)をぐるぐる回すことに関わっているようです。

さて今日取り上げる論文はこのデフォルトモードネットワークが空気を読むことに関わっているのではないかということを示したものです。

実験では日常生活の中で二人があれこれやりとりしている場面と一人で何かをしている場面を示してその時の脳活動を測定したものですが、二人のやりとりの場合に限ってデフォルトモードネットワークを構成する背内側前頭前野と楔前部に活動の増加が見られたことが示されています。

このデフォルトモードネットワークというのは「わたしはわたし」というわたし感覚にも関与するということがいわれていますが、他者の動作を自己の動作として取り込むミラーニューロンネットワークと協調して、場面を読む、空気を読むことに関わっているのではないかということが述べられています。

脳には何もしていない時に活動して、何かの課題を行っている時には低下する領域があることが知られている。内側頭頂葉と背内側前頭前野を含むこれらの領域はヒトの脳の“標準状態”を支えるものではないかということが多くの研究によって示されてきた。また実験室で受動的な視覚刺激を提示した時にはこれらの領域には安静時と比較しても変化が見られなかった。今回の研究では被験者に日常場面での社会的な相互作用を含む動画と含まない動画を呈示し、その時の脳活動について機能的MRIを使用して計測を行った。従来の受動的な画像提示研究と異なり、社会的相互作用を含む動画を示した場合には安静時と比較して内側頭頂葉(楔前部)と背内側前頭前野に活動量の増加が認められた。私達が知るかぎり、本研究は内側前頭葉と背内側前頭前野が共に活動を増大させたことを示したはじめての研究である。この標準状態に関与する脳領域は下前頭葉や側頭葉上部領域、紡錘状回の活動と結びついて社会的な認知に重要な役割を果たすものであると考える。

参考URL:Watching social interactions produces dorsomedial prefrontal and medial parietal BOLD fMRI signal increases compared to a resting baseline.

他人の心を読む時というのは、「自分ごと」として他者の気持ちを”感じる”理解のでデフォルトモードネットワークの活動が増加するんだろうか。

この領域はロジカルな心の理解に関わる領域であることを考えるとも報告されていることを考えると”考える”理解で活動しているんだろうか。

そもそも感じることと考えることはどの辺で線引がなされるんだろうか。

ヒトは感じることなしに考えることが出来るんだろうか。

難しいです。

 

 

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