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扁桃体と情動、聴覚刺激の関係とは?

これまで何度か紹介してきたように、ヒトの目というのは怖いものに目が向きやすいようです。

蜘蛛や蛇、赤色や上司の顔、こういったものが目に入ると、扁桃体が視覚野の活動を高め、注意がそこにロックインされることがいろいろな実験によって示されています。

でも普段生活していると、必ずしも怖いものを見てそこに目が向く、というわけではなく

赤ん坊の泣き声が聞こえれば、すっと視線もそっちに流れるし

職場の片隅でコソコソ話が聞こえると、気持ちもすっとそっちのほうに流れてしまう。

あるいはテレビで女優さんが色っぽい声で何かを話してたらついつい視線もそっちを向いてしまう。

こういったように聴覚刺激が視覚的注意を駆動することも少なからずあるのではないかと思います。

今日取り上げる論文は情動的な聴覚刺激によって視覚反応がどれほど変化するかについて調べたものです。

結論を述べると、やはり情動的な聴覚刺激を与えることで視覚処理反応が高まること、さらには一次視覚野の活動が高まっていることが示されています。

聴覚刺激→扁桃体→視覚野

というふうに扁桃体が耳から入った情動要素をキャッチして視覚野の活動を高めているのではないかということが述べられています。

【要旨】

「外部環境の情報処理は情動的注意によって増大されることが知られている。たとえば情動を喚起するような視覚刺激を与えると視覚野の対象領域の活動は調整されることが実験によって示されている。しかし日常生活においては視覚や聴覚など様々なモダリティが交錯して注意の調整がなされており、単一のモダリティが単一の領域の反応を引き出しているわけではない。今回、情動的な音声刺激が視覚反応に与える影響について調べた。結果、情動的な音声刺激は中立的な音声刺激に比べて視覚反応を高め、一次視覚野の活動に増大が認められた。これらの結果から情動的な注意はモダリティを超えて皮質反応の変化を引出していることが考えられた。」

参考URL:Cross-modal emotional attention: emotional voices modulate early stages of visual processing.




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コメント

料理が好きでよく料理をするのだけれども

不思議なことに手間をかけて、よく考えた料理ほどあんまりおいしくできなくて、時間がなくて適当にパパパーと作った料理のほうがよほど上手にできるような気がする。

台所に立つというのは、今日の論文の聴覚→視覚の注意だけではなく

視覚、嗅覚、触覚、聴覚、触圧覚、味覚、時間覚、いろんな感覚が絡むに絡み合う。

ぱちぱちと焼ける音や焦げる匂い、そんな感覚と同期して手が動き、足は台所を右に左に行ったり来たり。

トップダウン的な注意がボトムアップ的な注意、反応を邪魔するような話も聞くけど、頭で考えすぎるとうまくいかないのはそんなことかなと思ったりもします。

扁桃体が注意に絡む論文をいろいろと読んでいくと、なんだか扁桃体システムというのは、それひとつでなんだか完結していて、それ自体が一つの脳みたいなものかなと思ったりもします。

 

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