扁桃体と注意の関係
今日取り上げる論文は、感情が視覚的注意にどのように関るかについて調べたものです。
よく怖いものに見が釘付けになるといいますが、怖ければ目を背ければいいのに、どういうわけか私たちの身体は、怖いものに目がロックインされます。これがどういう仕組でそうなっているのかについて調べたのが今日の論文です。
結論から言うと
①扁桃体が脅威に対する選択的注意に中心的な役割を果たす
②一次視覚野に入力された脅威的な視覚情報は扁桃体に連絡され、その情報を受け取った扁桃体は視覚認知に関わる諸領域にフィードバックを行い、脅威に対して注意が向くよう諸領域の発火閾値の調整を行う。
というものです。
話が込み入っていて、細かいところまでは分からなかったのですが、模式的に表すと以下のようなものになるのかと思います。
高次視覚領域←←←←←↑
↑ ↑ ↑
脅威刺激→一次視覚野←頭頂側頭接合部 ↑
↑↓ ↑ ↑
扁桃体→→→→→→→→→→
なんだか余計分からなくなったような気がしますが、なにか怖いものが目に入ったら、いの一番に扁桃体に情報が入り、そのあとの反応の仕方は扁桃体が取り仕切るといったような感じなのかなと思いました。
まとめのところで、注意というのは単にトップダウンとボトムアップの二種類だけではなくて、本稿で示したように情動を軸とした第三の軸もあるということ、それを考えると知覚と情動は切り離せず、認知のベースはすなわち情動なのではないかということが書いてあり、興味深かったです。
医学書・医学専門書、看護・薬学などの教科書・専門書の買取サイト「メディカルマイスター」
【要旨】
「生き延びるためには眼前の脅威を素早く検出する必要があり、またそのためには状況に応じて適切に注意を配分する能力が求められる。近年の研究により脅威の検出に関わる脳内の注意機構が明らかになりつつある。今回過去の研究を基に、感情的な表情の提示によってヒトの空間的注意がどのような影響を受けるのかについて調査した。結果、恐怖を引きおこす表情は空間的注意を促し、これと対称的に笑顔を示した表情は空間的注意に影響を与えないことが示された。神経活動を調べると後部頭頂葉が死角領域の活動に先行したて活動しており、この部位が視覚領域に対してトップダウン的に影響を与えていることが考えられた。さらに後部頭頂葉の活動は扁桃体の活動によって調整されていることが考えられた。これらの結果から、脅威的な視覚刺激により扁桃体を通じて注意システムが調整されていることが考えられた。」
参考URL:Dynamics of emotional effects on spatial attention in the human visual cortex.