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半側空間無視と注意障害の関係とは?

今日取り上げる論文は半側空間無視と注意障害との関連について考察したものです。

以前紹介したことがあったのですが、ヒトの注意システムには背側注意ネットワークと腹側注意ネットワークの2つがあるそうです。

この背側注意ネットワークというのは前頭眼野が中心になって前頭葉と頭頂葉をグルグル回すようなシステムだそうです。

わかりやすく言えば、トップダウン的な注意、視空間的な注意、目でもって何かを探しに行く、そんな時に働く注意システムなようです。

これは右半球優位にできているそうです。

人の注意というのはどちらかと言うと左側に傾きやすいというのはこのことに由来しているそうです。

それに対し腹側注意ネットワークというのは腹側前頭葉を中心にして前頭葉と頭頂葉のあいだをぐるぐる回るネットワークで、これはボトムアップ型の注意に関わるシステムだそうです。

ぼんやりしていて注意散漫という時にはこの腹側注意ネットワークがうまく働いていないのかもしれません。

この背側注意ネットワークと腹側注意ネットワークは別々に回っているわけではなく、右頭頂間溝が接点となってお互いがお互いに影響を与えているそうです。

半側空間無視症状は背側にしろ腹側にしろ、注意ネットワークのどこかの領域が損傷すると、それがどこであれ生じる可能性があり、局在的な脳機能障害と言うよりはネットワーク障害で捉えたほうがいいのではないかということが述べられています。

また半側空間無視患者は往々にして注意障害も合併することがあるのですが、これは右頭頂間溝を通じて腹側と背側の注意ネットワークが互いに影響を与え合うために生じるのではないかということも述べられています。

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【要旨】

「半側空間無視は主に右半球損傷に伴う神経症状である。しかしこの神経症状には空間認知障害に加え、他の認知障害が伴うことが知られている。半側空間無視の中心症状は、視界の中の目立つものを検出する能力の低下、空間的注意能力の低下、短期記憶能力の低下である。これらの症状は直接空間認知とは関係しない症状、具体的には注意の切り替え、標的の検出、覚醒/警戒系の低下との関連で生じてくる。私たちは半側空間無視を脳の局在的な機能障害と捉えるよりは、分散的なネットワークの障害と捉えるほうが妥当であると考える。右半球の頭頂葉や側頭葉、前頭葉の腹側領域は空間無視症状と直接関係する領域であるが、これらの領域は腹側前頭頭頂注意ネットワークを構成する部位でもあり、注意障害とも関連すると考えられる。半側空間無視症状が右半球優位に出現するのは、右半球の腹側領域が背側注意ネットワークと連絡を持つためであると考えられる。」

参考URL:Spatial neglect and attention networks.

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