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紡錘状回と表情認知システムの関係とは?

今日取り上げる論文は表情認知について調べたものです。

先日、視覚の背側経路と腹側経路について取り上げたと思うのですが、

これは視覚野から入って頭頂葉に抜けていく背側経路があって、これは空間情報の処理にはたらき

もう一つは視覚野から入って下側頭葉に抜けていく腹側経路というのがあって、これは記憶や情動と関連する領域と結びついて、意味情報の処理に関わるとされているようです。

この図がイメージがつかみやすいと思います。

このように腹側経路というのは意味処理に関わるのですが、この腹側経路を構成する下頭頂葉の底の方に紡錘状回と言われる領域があります。

紡錘状回立体図

視覚野から入った顔の情報は、ここまで運ばれてきて「顔」として認識されるようです。

ただこの「顔」という認識にもいろんなレベルがあるようです。

例えば ・_・ や ・o・ を見ても顔として認識できるでしょうし、気難しい上司の顔色を伺う時なんかはもう少し高度な認識をしているのではないかと思います。

今日取り上げる論文では、実際にこの紡錘状回とその周辺に電極を取り付け、表情認知がどのようになされているか調べたものです。

結論を述べると

①表情認知は紡錘状回でなされる
②基本的な認識(みているものが顔か、顔ではないものかという基本的な枠組み)は顔情報処理の初期の段階でなされる
③その後少し時間をおいて、高度な情報処理(だれの顔か、どんな表情かなど)がなされる
④これらの紡錘状回の活動は他の領域(前頭-頭頂ネットワークまたは扁桃体)からのトップダウン処理の影響を受ける

ということになると思います。

【要旨】

「今回、術前のてんかん患者を対象に、頭蓋内の視覚野に直接電極を設置して表情認知課題を行っている時の脳活動について調べた。電極は「表情」に対して感受性がある右紡錘状回と、「家」に対して感受性があると言われる右海馬傍回に設置された。5つの実験が行われ、右紡錘状回の表情情報処理が知覚的に(実験1,5)、あるいは情動的に(実験2,3)、または社会的に(実験4)どのようになされているのかが調べられた。結果、情報処理の初期の段階でN200成分が顔情報の基本的なカテゴリー分けを反映していることが示された。一方、個別の顔の認識や情動情報、眼差しの方向などは同じ領域の後期の段階(刺激の提示から200~1000ミリ秒)で調整されていることが分かった。これらのことから右紡錘状回内で異なるタイミングで異なる情報の処理がなされ、これは他の領域からの調整によるものであることが考えられた。」

参考URL:Modulation of face processing by emotional expression and gaze direction during intracranial recordings in right fusiform cortex.

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コメント

生後6ヶ月の子が、お母さんがいないと泣き止まないので、

やむを得ず母親があやしている表情の動画をアップでとり

それをiPadに入れて泣き止まない子供に見せたことがありますが

3回目くらいで何かがおかしいということに気づいて、かえって泣き出すということがありました。

ヒトの脳には眼差しの認識に関わる仕組みがあるということなのですが

あやすというのは眼差しによる相互作用で、それが成り立たないのを生後5ヶ月の彼はきちんと認識できたのかなあと思いました。

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