ミラーニューロンシステムと観念運動失行
今日取り上げる論文は、ミラーニューロンシステムと観念運動失行について調べたものです。
観念運動失行についてははっきりとした定義は確立しませんが、これはスティック状のナースコールボタンを渡すとマイクを持つように使ってみたり、歯ブラシを渡してもうまく使えなかったり、物品をうまく使えなくなるようなそんな症状になります。
この論文ではこの責任病巣はミラーニューロンシステムを構成する頭頂間溝のあたり
なのではないかということが述べられています。
物をつかむ時、たとえばコップとシャーペンではそれに対応する手の形というのは明らかに違いますが、このような手の形の調整はどのように行われているのでしょうか。
一説によると、視覚野から入った情報が頭頂間溝に運ばれて、ここで物品を把持するのに適切な手の動きが様々なレパートリーの中から選択されて、
それが前頭葉のブローカ野のあたりに連絡されて、そこで初めて実際の手の動きにつながっていくという仕組みがあるそうです。
ミラーシステムを示した以下の図のparietal MNS(頭頂ミラーニューロンシステム)→frontal MNS(前頭ミラーニューロンシステム)の流れがそのようです。
上図参考URL:https://icare4autism.wordpress.com/2008/11/05/broken-mirror-neurons-linked-to-autism/
またこの物品に対応した適切な動詞を選ぶ頭頂間溝のはたらきというのは左半球優位になっているそうです。
端的に言えば左頭頂間溝が動詞を選んで、ブローカ野が選ばれた動詞を基に実際の動作につなげていくというような仕組みになっているというお話だと思うのですが、
このような仕組みになっているため、左の頭頂間溝を損傷した患者は動詞を選択できず、結果、結果観念運動失行となりやすいということが述べられています。
「近年の研究によって、実際に自分が動くのであれ、その動きを観察したものであれ、下前頭葉と頭頂葉にある“ミラーニューロン”と呼ばれる神経細胞に等しく表象されることが報告されている。今回我々は動作の実行と認識は同格であること、もう一つは手と対象物の関係性をコードするシステムからミラーニューロンシステムが立ち上がるということについて検証を行った。対象は44名の左半球脳卒中患者で、そのうち21名が観念運動失行を呈した。この対象者にパントマイムの模倣/認識課題を行わせ、手や腕の肢位、動きの大きさの程度、タイミングについて評価を行った。結果、パントマイムの模倣を行うこととパントマイムの認識の間には強い関係が認められた。物品操作と関連した洗練されたジェスチャーというのは、進化的に古い機能である対象物品を握るシステムと関連していること、また対象物品とそれと対応する動作をマッピングするそのシステムは背側経路と腹側経路によってマッピングされること、そしてそれはヒトにおいて左半球に優位であることが考えられた。」