前頭前野のどの部分が自己認知と関係するのか?
世の中には離人症や夢遊病という自分というものがどこか外れてしまう症状があるようですが、この「自分」というのはそもそもどういう状態なのでしょうか。
今日取り上げる論文はこの「自分」というものがどこにあるかを探ったものですが、やはりデフォルトモードネットワークに属する背内側前頭前野のあたりが重要なのではないかということが述べられています。
この研究では過去に行われたいろいろな認知・注意実験を重ねあわせて安静時の脳活動を調べたのですが、安静時>自分への注意>外部への注意でこの背内側前頭前野の活動が高くなっており、この領域が「自己」に関係する領域ではないかということが述べられています。
この背内側前頭前野という言葉で検索をかけると不安を制御するだとか冗談の理解に関わるということが書かれており(一次情報についてはきちんと調べていませんが)、ひょっとしたらメタ認知に関わる何かなのかなと思いました。
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【要旨】
様々な神経画像技術によって認知活動と脳活動の関係について明らかになってきている。この中でも安静時の脳活動というのは健常者の脳活動だけでなく他の精神疾患の脳活動を理解する上でも重要なものとなっている。ここで問題となるのは何か課題を行っている時と比べて安静時のほうが高い活動をスる領域はどこかというものである。本稿では過去に行われた5つの研究のメタ解析を行うものである。その5つの研究とは意図の理解、刺激の弁別、空間認知、他者の信念の判断、視線の認知である。一般化線形モデルを用いて解析を行ったところ安静時に関連して5つのクラスターが抽出された。1つは前部/下部の帯状回であり、4つは上前頭溝に沿った前頭回の内側/上部領域であった。他の課題による結果も考慮して考察を行ったが、内側前頭前野は外向きへの注意の時には内向きへの注意の時に比べより活動が低下しており、さらに安静時には、外向きの注意や内向きへの注意のいずれと比べても高い活動が認められた。これらの結果から、この内側前頭前野領域が自己と関連する領域であると考える。
参考URL:A relation between rest and the self in the brain?
コメント
座禅や瞑想を行ってもこの領域の活動が高まることが報告されていますが
今、趣味的に瞑想をやっていて、ふとした瞬間に内向きの注意でもなく外向きの注意でもなく、内と外が超えた不思議な意識状態になることがあります。
こういうのは変性意識状態ともいわれるそうなのですが、どこにも注意が向いていなくて、かつどこへでも注意が向いているような状態がメタ認知と何か関係があるのかなと思いました。
あともうひとつ
これで背内側前頭前野がメタ認知だというような短絡的な理解ではなく
脳のネットワークが全体としてある種の形をとったときにある現象が惹起するというようなトポロジー的な解釈方法があればよいと思うのですが、そういったものがないかまた調べてみたいと思います。