視覚的注意の3つのシステムとは?
今日取り上げる論文は、視覚的注意の3つのシステムについて、その関係性について調べたものです。
この3つのシステムとはボトムアップ型の注意、情動駆動的な注意、トップダウン型の注意になります。
ボトムアップ型の注意とは、何かしら目立った刺激によって目に飛び込んでくるようなもの、情動的注意とは、蜘蛛や蛇、怒った顔などに反応するようなもの、トップダウン型の注意とは何かを探そうとして自分で情報を取りに行くようなものをイメージしてもらえればと思います。
いくつかの実験を行った結果示されたのが以下のものになります。
①3つのシステムは独立、並行して働いている。
②3つのシステムは同時に働いている。
③3つのシステムは注意反応を促進させる機能があり、これらの結果は合算される。
というものです。
これをリハビリの現場に即して考えれば、いろんな理由で注意機能が低くなった患者さんの目を引くように、トイレの手すりやら、食堂のテーブルやら、車いすなんかに目印をつけたりするのが外的注意を駆動して、
実際にトイレに座ろう、食堂に行こう、車いすに移ろうとするような状態の時には内的注意が駆動され、
赤字の太字で「キケン!」と書かれたようなものには情動的注意が駆動され、
かつ患者さんの生活場面で介入するような場合には、これらの3つの注意が加算されて相乗効果を発揮するといったものなのかなと思いました。
【要旨】
「選択的注意は単一のものではなく、様々な要素から構成されているものである。選択的注意は刺激の基本的な性質により駆動されるものと、刺激の情動的評価を行うもの、そして観察者の意図を反映したものの3つから成り立っている。しかしこれら3つのシステムが独立して作動しているかについては未だ議論の余地が残されている。今回、外的注意、情動的注意、内的注意が互いに干渉しない条件で実験を行い、有意味な刺激によって注意反応が促進されることが示された。さらにはこの3つのシステムの機能は互いに加算されうることが示された。また情動的注意と外的注意は異なる処理がなされていることが示された。このことからこれらの異なる注意システムは同時に働き、迅速で効果的な視覚処理を行っていることが考えられた。」
コメント
外的注意、内的注意、情動的注意のどれが優れているというわけではなく
この3つが協同して働くので、状況の変化に合わせて柔軟に対応できると思うのですが、
これを職場で考えると
管理業務が得意な人、ビジョンを語るのが得意な人、もくもく一徹にに仕事をこなす職人のような人、いろいろあって
同じ空間で仕事をしていると、往々にして、互いが互いのことを理解しづらく、「あいつはわかっていない」とか「なっていない」とかいう風になりがちだけれども
外的注意、内的注意、情動的注意が独立、並行、同時に働くことでいろんな状況に柔軟に対応できることを考えると
いろんなタイプの人間がいることで、組織が直面する状況に柔軟に対応できるわけで
自分と合わない人がいるとしても、それは組織全体で考えれば好ましいことなのかなと思いました。
ヒトはいろいろで面白いです。
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