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「シミュレーション説と理論説の統合:自己認知から社会的認知まで」

ヒトはコミュニケーションする生き物です。

でもこのコミュニケーションというのはいったいどういうものなのでしょうか。ヒトはなぜ目に見えない他人の心が分かるのでしょうか。人の心を感じている時いったい脳はどのように活動しているのでしょうか。

心の理解と脳の関係については大きく二つの学説があるようです。

一つは直観説ともいうようなもので、これは泣いている子供を見れば直感的に子供の悲しさを感じるし、怒っている人を見ればあれこれ考えなくても直感的に怒っていることを理解する。

つまり脳は直感的に相手の感情を理解するというのが一つの立場です。

もう一つの立場は理論説とも呼ばれるもので、相手の感情をあれこれ考えて理解するというものです。

苛立った上司を見れば上司の置かれた状態をあれこれ考えて、仕事が溜まっていて機嫌が悪いのか、家族とうまく言ってなくて機嫌が悪いのかあれこれ推測することが出来る。

つまり脳は相手の状態をあれこれ考えて相手の心を理解するというのが一つの立場です。

今日取り上げる論文は心の理解に関する脳活動についてのものですが、この二つの考え方というのは別々なものではなく統合できるものなのではないかということが述べられています。

【要旨】
社会的認知に関わる神経基盤が何かという問題においてはその主張は二つの陣営に分けられる。一つは自他の認知には共通した神経基盤がありその領域によってシミュレーションされるという立場である。もう一つの立場は理論説というもので、これは内側前頭前野において理論的に相手の心情を考えるという立場である。社会的な認知はシミュレーション主義者に見られるような直感的な認識から理論説に見られるような内省的なものまで様々なものがある。誰かがミルクを飲んで顔をしかめているのを見るときに湧き上がるような感情は直感的な認知の最たるものである。結論としては社会的認知の神経基盤を巡る多くの議論は実験室で行われているような方法から一つの方法を決定するという性質を持ったものであり、現実世界に合うように実験方法を工夫してこの二つのシステムが全体としてどのように統合されるのかを調べるべきであると考える。

参考URL:Integrating simulation and theory of mind: from self to social cognition.

コメント

すこし詳しいことを書くと

直観説のベースになっている神経機構はミラーニューロンシステムと呼ばれるものです。

これはモノマネシステムのようなもので相手の動作を自分の脳の中に取り込んで自分の動きにかえてしまうようなシステムで

相手が笑っていると自然と自分の頬も緩むのはこういったミラーニューロンシステムが関係しているとも言われています。こういったシステムがあるのであれこれ考える前に自分の身体が相手とシンクロすることで相手の感情を理解できる、これが直観説のベースです。

理論説のベースになっているのはデフォルトモードネットワークといわれるもので

これは脳の中のシミュレーション全般に関わるようなシステムです。このシステムを使って相手の心を自分の脳の中で再構成し、相手の心を理解する、これが理論説のベースになる神経機構です。

この論文ではこの二つのネットワークは別々なものではなくリンクすることで柔軟に相手の心を理解しているのではないかというものです。

この画像が一番わかり易いので興味のある方はどうぞ。

上図参考URL:

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