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「タッチを観察した時の体性感覚領域の活動と視覚と触覚の共感覚者におけるケース」

脳はいろんなシステムが組み合わさってできているのですが、その中の一つにミラーニューロンシステムというものがあります。

これはいわばモノマネシステムというような特徴を持っていて、目で見た情報を自分の体に取り込んで、あたかも自分が動いているような感覚につなげるような働きがあります。

このように目で見た情報を身体の情報に変えるような仕組みがあるので、誰かの真似をするということが可能になると思うのですが、今日取り上げる論文はこのミラーニューロンシステムについて調べたものです。

実験では他人が触られたところを見ると自分が触られた感じがするという特異な感覚をもつ女性を対象におこなったものです。

タッチを観察している時のこの人の脳活動を調べてみるとミラーニューロンシステムが普通の人と比べてはるかに高く活動していることが示されています。

それゆえ普通の人は意識に上がらないような感覚が他人が触られているのを見るだけで上がってくるのではないかということが述べられています。

【要旨】
本研究では視覚と触覚の共感覚という新しいパターンの共感覚者について取り上げる。症例はCという女性であるが、彼女は他人が触られているのを見ると自分が触られる感覚が惹起されるという共感覚を持っている。それ以外は健康で神経学的にも問題はない症例である。今回の実験では症例Cと12名の健常者を対象に実験を行った。実験では実際に顔や首を触られた時と、他人が同じ部位を触られているのを見た時の脳活動の測定を行った。結果、健常者においては他人が顔を触られている時には、あたかも自分が触られていることを示すような体性感覚野の活動が見られたが、首を触れた時はそのようではなかった。さらに健常者においては運動前野と上側頭溝、頭頂葉からなるミラーニューロンシステムの賦活が見られた。症例Cにおいては以下の点において健常者と相違が見られた。一点目はタッチの観察によって引き起こされる体性感覚野の活動が健常者と比較してはるかに高かった点、二点目が左の運動前野の活動が健常者と比較して有意に高かった点、さらに三点目が健常者では見られなかった両側の島皮質の活動増加が見られた点である。これらのことから症例Cに関しては他人が触られた場面を見ることでミラーニューロンシステムに高い活動が惹起され、それがある閾値を超え意識化されていることが考えられた。

参考URL :Somatosensory activations during the observation of touch and a case of vision-touch synaesthesia.

コメント

身近な人が苦しんでいるのを見るとあたかも自分が苦しいような感じがするけど、

それがとてもリアルに感じられてしまう人もいるんだろう。きっとスプラッター映画なんて見られないんだろう。

少し詳しい話をすると

この視覚と触覚の共感覚を持つ人の脳活動を見るといろいろな違いが見られるのだけれども

とりわけ両側の前島皮質の活動の増加が著しく、この点は今回の実験では健常者では殆ど見られないもので

このへんの活動がリアルに感じられる要因として大きいのではないかということが述べられています。

世の中には情が薄い人や情が厚い人がいたりするけど、こういうのはミラーニューロンシステムでなにか違うんだろうかなどと思いました。

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